鎌倉淳ブログ

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2011 01/10

台湾鉄路局・新型特急電車の新技術

日本車輌と住友商事が、台湾向け鉄道車両を大量受注してニュースになった。
たとえば、ヤフーには、以下のような記事がある。

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住商と日本車両、実績を評価 台湾から電車136両受注
フジサンケイ ビジネスアイ 1月7日(金)8時15分配信

 住友商事と日本車両製造は6日、台湾鉄路管理局(TRA)から鉄道車両136両を受注したと発表した。受注額は約300億円で、2012年から14年にかけて納入する。台湾ではインフラ整備計画の一環として、台北や高雄、台中といった都市内や都市と都市の間を結ぶ鉄道網の拡充に向けた投資が活発化している。

 今回受注した車両は、主に台北-花蓮間を走る特急電車として使用される予定。流線型のスタイルを持つアルミニウム車体が特徴で、8両で1編成とする。車両は車体傾斜式(振子)電車と呼ばれるタイプで、カーブに入る前から車体をカーブの内側に傾け早い速度で走行できるとともに、快適な乗り心地も実現できるという。最新の火災対策を施しているほか、車内はバリアフリー設計とした。

 住商と日本車両連合がこれまでに台湾に供給した鉄道車両は計約400両にのぼる。台湾では今後も数百両単位での通勤・特急電車の投入が予定されており、こうした実績を武器に台湾市場の開拓を進める。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110106-00000004-fsi-bus_all
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どの新聞も同じような内容で、これだけではよくわからない。

日本車輌HPに掲載されているニュースリリースを見ると、台湾・花蓮間用の特急車両として8両編成を17編成(計136両)受注したということだ。

台湾・花蓮間は3年ほど前に乗車した。そのリポートは「3日間台湾鉄路全踏破」に記してある。このときは、当該区間の電化が完成したばかりで、旧式のディーゼル特急がまだ走行していた。その車両を、ようやく電車に置き換える、ということのようだ。

車両の詳細は明らかにされてないが、ニュースりリースによると、「流線型のスタイルを持つアルミニウム車体」とある。添付された画像はこんな感じだ。

230c83b3.jpg

特徴としては、「いわゆる振子電車と呼ばれるタイプで、線路からの情報を読み取ってカーブに入る少し前から徐々に車体をカーブの内側に傾け、急カーブでも従来の車両よりも早い速度で走行する」とある。また、「本件では日本車両が開発した車体傾斜システムを採用します」とも書かれている。

「振子式電車」は、特急「しなの」に投入された国鉄381系電車が嚆矢で、その後も多数の車両が日本国内で導入されている。ただ、日本車輌が開発した車体傾斜システムを採用した特急電車は知らない。調べてみると、日本車輌の車体傾斜システムは「鉄道車両の車体傾斜装置」として特許が出されている。しかし、この特許申請後に開発された日本車輌製造独自の振子式車両は、日本には存在しないようである。したがって、今回の台湾向け車両は、日本に類似形式のない新型車両と思われる。

ニュースリリースにわざわざ「日本車輌が開発した車体傾斜システム」と書かれていることからすると、じつは、この点が今回受注の隠れたアピールポイントなのかも知れない。この特許のポイントは電気システムで車体傾斜を制御できることである。従来の車体傾斜は油圧システムだったが、電気システムならば重量は軽くなるし、制御の応答も早くなる。メンテナンスも容易であろう。電気制御はかなり画期的である。

台湾に導入された特急車両としては、2007年から導入開始されたTEMU1000形電車がある。これは日立製作所のJR九州885系電車を原型としたものだが、現地の評価は非常に高かった。その高評価が、今度の受注につながったのかも知れない。車両デザインも、TEMU1000形に似ているような気がする。

かつて、台湾はその特殊な政治事情から、韓国製の鉄道車両が多く使われてきた。しかし、韓国が中国と国交を樹立し台湾と断交してからは、特殊な政治性は失われた。そして、韓国メーカーのメンテナンスの評価が低く、近年は日本製車両が大量導入されている。通勤型車両も新型車はほとんどが日本製である。

日本でまだ実用化されていない技術を用いた新車両が台湾で走るのであれば、これはとても喜ぶべきでことではないかと思う。

ところで、上記の新聞記事を読んでも、振子式の新技術に関しては全く書かれてない。他紙も大同小異である。それにしても、リリースと記事を較べると、単にリリースを要約しただけのものが記事になっている印象を受ける。一般紙の記者がさまざまな分野に精通するのことが難しいのは理解するが、もう少し突っ込んだ話を書いて欲しいと思う。リリースをまとめただけの記事では悲しすぎるし、これでは著作権も主張できないであろう。


以下、プレスリリース。原文はこちら

平成23年1月6日 
会 社 名 日 本 車 輌 製 造 株 式 会 社


台湾向け鉄道車両の受注に関するお知らせ

日本車輌製造株式会社(社長:中川 彰、本社:愛知県名古屋市、以下「日本車両」)と住友商事株式会社(社長:加藤 進、本社:東京都中央区、以下「住友商事」)は、住友商事を主契約者とし、台湾鉄路管理局(Taiwan Railways Administration、以下「TRA」)から車体傾斜式(いわゆる振子)電車 136 両を受注しましたので、下記のとおりお知らせいたします。



1.受注先
 台湾鉄路管理局

2.契約金額
約 300 億円

3. 受注の背景及び概要
 台湾では、大規模なインフラ整備計画の一環として、2009 年から 2016 年までの 8年間で交通ネットワークの整備に 1 兆 4,523 億台湾元(約 4 兆円)を投資する予定で、台北、高雄、台中など都市内および都市間を結ぶ鉄道網拡充のための投資が活発化しています。TRAは台湾全土の在来線鉄道輸送を担当する政府直轄の組織で、西部海岸と東部海岸をそれぞれ走る路線が主な輸送系統となっています。今回受注した電車は、2012 年から 2014 年にかけて納入され、主に山間部や海岸線に沿って走る風光明媚な東部幹線の特急電車として使用される予定です。
 この電車は、流線型のスタイルを持つアルミニウム車体で、8 両を1編成とし、17 編成の合計136 両で構成されます。いわゆる振子電車と呼ばれるタイプで、線路からの情報を読み取ってカーブに入る少し前から徐々に車体をカーブの内側に傾け、急カーブでも従来の車両よりも早い速度で走行することができると共に、乗客に不快な遠心力を感じさせずに快適な乗り心地を提供するもので、本件では日本車両が開発した車体傾斜システムを採用します。また、国際的な最新基準の火災対策を施し、車内はバリアフリーの設備や幼児連れの乗客にも優しい設計になっています。地形的な理由もあり、交通網の整備が西部海岸に比べてやや遅れていると言われる東部海岸に、この新型特急電車が大量に投入されることで同地域の輸送力が向上し、台湾経済の活性化に繋がることも期待されています。
 日本車両と住友商事が、これまでに台湾市場に供給した鉄道車両は、両社が出資する台湾の鉄道車両製造会社である台湾車輛股份有限公司(本社:台湾新竹縣、以下「台湾車輛」)の受注・製造分を含め、約 400両に達しています。直近では、台湾車輛が TRA に納入した通勤電車 160 両が営業運転に投入され、乗り心地の良さや低い故障率が高く評価されています。台湾では、今後も数百両単位での通勤・特急電車投入の計画があり、日本車両と住友商事は、同市場における鉄道車両シェアの更なる拡大を図ります。

4.売上計上時期
平成 25年 3月期から平成 27年 3月期を予定しております。
 なお、当期(平成 23年 3月期)業績への影響はありません。

台湾鉄路と日本人
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