鎌倉淳ブログ

旅と日常と、たまに美味しいもの

2011 01/19

世界で一番暑い土地はジブチなのか?

今日のNHKプレミアム8「世界で一番暑い土地~アファール三角地帯 ジブチ~」で取り上げられたジブチという国を知っている方は余り多くはないだろう。まして、世界一暑い土地、と言われても「聞いたことないな」という感想を抱く方が多いのではないか。

一般に、世界で一番暑い土地、といえば、世界最高気温を記録したイラクのバスラであろう。ところが番組ではバスラの「バ」の字も出ず、ジブチだという。よく見ていると、「年間平均気温」が世界一だということらしい。世界最低気温記録はロシアのオイミヤコンで、NHKプレミアムでは「世界で一番寒い村」として番組にしている。それと対をなす企画ならば、ジブチではなくバスラであるべきだが、イラクでは取材がしにくいのだろう。そういう事情で、「年間平均気温世界一」というニッチな記録が選ばれたようだ。しかも「村」でもなく「町」でもなく「土地」というタイトルがまた微妙である。

しかし、そういうことはおいておいて、番組はおもしろい。なにより、ジブチというあまりしられていない国を取り上げたのがよい。ジブチはアフリカの角の付け根部分にある国であり、ソマリア、エチオピア、エリトリアと国境を接している。マンダブ海峡を挟んでの対岸はアラビア半島のイエメンで、僕はイエメンは訪れたことがあるが、ジブチはない。イエメンの港町で「ジブチまでの船があるよ」と言われたときは行きたくて心が動いたが、旅程を変更するわけにいかない事情があって海峡を渡れなかった。

ジプチを取り上げた日本語ガイドブックも少なく、思い当たるのは「旅行人ノート アフリカ大陸37カ国ガイド」くらいである。あまりしられてない小国ジブチだが、ここには世界で最も塩分濃度の高い湖がある。アッサル湖という塩原の真ん中にあるような湖である。その塩分濃度は34.8%とされていて、海水がだいたい3%程度、死海が25%程度なので、圧倒的に濃い。番組の後半はこの湖の塩を運ぶキャラバンのルポルタージュになっていた。

ところで、子供の頃に習った理科では、飽和食塩水濃度は25%程度だったと記憶している。だから死海もそのくらいの濃さである。アッサル湖でそれより濃い「塩水」が存在するのは驚いた。おそらく、気温が高く水温も高いから飽和食塩水濃度も上がるのだとは思うが、温度によってそんなに違うものなのだろうか。

とまれ、アッサル湖の映像は圧倒的である。白い塩原のひび割れた大地はとても美しい。このような映像は初めて見た。この番組の白眉であろうし、NHKならではの取材といえる。

ちなみに、番組ではアッサル湖は秘境のように描かれていたが、ジブチでは第1級の観光地として知られている。首都からは100キロ程度なので、タクシーで日帰りできる。途中の道路も悪くないと聞く。いつものことだが、テレビ番組ではそういう点は全部無視して、とんでもなく秘境っぽく表現されている。ちなみに、外務省員が紹介しているジブチ便りというコラムがあり、そこでもアッサル湖は紹介されている。いいなあ、外交官。

またジブチの治安は安定しているので、旅行じたいは可能である。隣国ソマリア沖の海賊退治のため、各国艦船の基地にもなっている。そのため日本人も意外に多いらしい。エチオピアとは鉄道でも繋がっていて、旅客列車も運行しているらしいので、これもぜひ乗ってみたい。エチオピアがエリトリアを失って内陸国となって以来、この鉄道はエチオピアと外洋をつなぐ重要な路線になっているという。

出演は大高洋夫であった。「世界で一番寒い村」「世界で一番北の町」にも出て好演していたが、この番組でも持ち味を出していた。暑さという画像ではなかなか伝えにくい感覚を、さまざまな表現で口に出していたのはさすが役者だなあ、と思う。人当たりもよく、現地の人に溶け込んでいる。

ただ、これまでの「寒い村」「北の町」に較べると、生活の厳しさは伝わってこなかった。酷暑の地と酷寒の地を較べれば、おそらく酷暑の土地のほうがまだ住みやすい、ということなのか。人はあまりにも寒いと耐えられないが、あまりにも暑くてもなんとか耐えられるのだろう。もっとも、地球上にプラス70度の土地とかがもしあれば、耐えられないのかも知れないが。

そういうことで、普通にロケしたら普通の途上国番組になってしまうからか、番組制作者はおもしろくするためにちょっと作り込んだようである。とくに番組前半の構成は、あまりにも偶然を装っていて白々しい。フランス語を話していた人ばかりだったけれど、そんなに全国民がフランス語に堪能なのか?と疑問にも思った。どうも出演者は仕込まれ過ぎている気がする。

ジブチを含めたアフリカ北東部は複雑な歴史を持つ国が並ぶ。その歴史を知るのはあまり簡単ではない。アフリカ史を書いた手頃の本としては「新書アフリカ史」があるが、扱う時代と地域が広すぎて、ジブチにまで筆は及んでいない。ただし、アフリカ、とくにブラックアフリカの歴史を簡単に知るには好著である。

前出の「旅行人ノート アフリカ大陸37カ国ガイド 」は名作だが、じつはもう絶版になっている。1999年の版が最新だが、蔵前編集長によると、改訂のために取材に行く人がいないので、もう改訂できないし、古い情報をいつまでも売り続けるわけにいかないので重版しないそうである。僕もアフリカに行ったときはお世話になった、本当に使えるガイドブックだったので残念である。


以下、番組紹介

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プレミアム8 <紀行> 世界一番紀行 「世界で一番暑い土地~アファール三角地帯 ジブチ~」
1月19日(水) 午後8:00~9:30 
http://cgi4.nhk.or.jp/topepg/xmldef/epg3.cgi?setup=/bs/premium8-wed/main
アフリカ東部の「アファール三角地帯」。ここは、最高年間平均気温34.5度を記録した“世界で一番暑い土地”だ。 海面より標高が低い盆地状の地形のため、熱風が停滞して異常な高気温になる。また、活発な火山活動がもたらす地熱が、暑さに拍車をかけ、乾季は1日の最高気温が50度近くまで上がる。人々は酷暑の中、どうやって生活を営み、どんな生きる喜びがあるのか? しゃく熱の地ではぐくまれた知恵や独自の価値観を探る。
【リポーター】大高洋夫
【語り】小野文惠

新書アフリカ史
旅行人ノート アフリカ大陸37カ国ガイド

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