
自分が育児に関わってから、子どもを育てるのはこんなにも大変なことなのか、と痛感している。1人の子どもでも大変なのだから、2人、3人と子どもを産み育てるのは、現代日本では並大抵のことではない。
しかし、2人、3人と子どもを育てる家庭が数多く存在しないと、人口は減少していく。その意味で、日本の人口が減少していくのは必然である、と一児の父として実感する。
人口問題を考えるとき、「少子高齢化」とひとくくりにしてはいけない。深刻なのは「少子化」であり、人が長生きする「高齢化」は悪いことではない。本書の著者が述べるように、「少子化」と「高齢化」を分けて考えなければ、この問題はすっきり見えない。
というのも、日本では高齢化対策は、それなりに進んでいるからだ。病院は高齢者に対して十分な医療を提供しているし、かけ続けていれば、年金もある。町を歩けばバリアフリー化も進んでいる。もちろん、介護施設や介護要員は足りてないなど、問題はたくさんあると思うが、社会全体が高齢者に対して配慮をしている。
それに比べれば、少子化対策は遅れている。保育園はまるで足りないし、下手すれば幼稚園だって入れない。ベビーカーで混んでいる電車に乗れば白い目で見られるし、バスに乗るためにはベビーカーをたたんだ上に子供を抱えるという高度な技を求められる。教育費はかさむのに、子どもを産んだらむしろ収入は減ることもある。年金などもちろんないから、母親といえど働き続けなければならないが、職場は育児中の母親に優しいとはいえない。一人だけならともかく、2人、3人となると、そうそう育てられない。こんな社会では、子どもが好きでも、たくさん産むわけにはいかないだろう。
さて、本書「未来の年表」では、人口減少によって引き起こされるさまざまな問題点を指摘している。大学が倒産したり、インフラ整備が行き届かなくなったり、老老介護が深刻化したり、火葬場が足りなくなるのは、まあその通りだろう。私はどこの火葬場で焼いてもらえるのだろうか?などとと思う。
本書はそうした近未来の予測に優れているが、途中から数字を追うような記述になっていて、中盤から書き手の疲労感が伝わってきた。後半の「処方箋」部分に関しては抽象的で、現実感がない。著者は新聞記者である。新聞記者は問題点の指摘は得意だけれど、対策を考える能力に乏しいと、よく言われる。そんな感じの「処方箋」で、物足りない。
人口減少世界でこれから起こることは分かったが、簡単な対策はない。2050年頃、自分が80歳を迎えた頃に、人口問題は改善の方向に向かっているのだろうか。
それとも、もう自分はこの世にいないのか。
未来の年表 人口減少日本でこれから起きること
河合雅司 講談社現代新書