紙の新聞を取らなくなった理由は、夜遅くに集金が来るのがいやになったことと、古新聞が溜まるので、捨てるのが面倒になったことだ。
しかし、電子版の時代になって、いずれも解消した。クレジットカード支払いができ、古新聞も溜まらない。おまけに旅先でも読めるし、古い記事の検索もできるし、各地の地方版も読める。だから、私は今、日経電子版を愛読している。なんだか宣伝みたいだけれど。

『新聞社崩壊』は、新聞社の経営を、主に販売の視点でみたものだ。
新聞衰退の原因について、「値段の高さ」「記事の劣化」「新聞社への反感」の3つを挙げている。自分が新聞をやめた理由とは違うけれど、そういう理由もたしかにあるのだろう。
本書は、新聞社の経営力を3つの指標から分析した内容が新しい。社員一人当たりの売上、自己資本比率、残紙率(J-READ/ABC普及比率)の3つである。
数値を5段階の指標にして合計点をみる、という数値処理は、統計としては正確性を欠くものの、おおざっぱな傾向はわかる。
数値的にしんどいのは、毎日、産経、デーリー東北、神奈川、上毛、岐阜、神戸あたり。毎産2紙の苦しさはよく知られているが、神奈川、神戸あたりはイメージにはなかった。
両紙とも大都市を拠点にしているから強いかと思っていたけれど、そういうものではないらしい。統計には出てこない、少部数の地方紙には、もっと厳しい会社があるだろう。
いずれ新聞社の再編は不可欠だろうし、倒産する会社も出てくるとは思うけれど、業界全体が消えることもないだろう。何より、あれだけ便利な電子版を出している日経が消えるとは思えない。だから、そう悲観するほどではない。
何より、新聞社にはコスト削減余地がたくさんある。デジタルファーストの時代に、独自の印刷設備や配送網を維持する必要なんてないし、販売店も複数社の相乗りで十分だ。聖域だった記者の仕事も、通信社に任せることで取材網を絞ればいい。
とはいえ、月4,000円の購読料が高すぎて、読者の裾野を広げるのが難しいのも理解できる。
その意味で、朝日新聞デジタルが作った月980円コース(有料記事が月300本)とか、デジタル毎日がはじめた100円で24時間読み放題コースとかは、新しい試みだと思う。
そうだよね、新聞なんて、そもそも100円程度を支払って、駅のスタンドで買うものだ。だから、1日100円でその日の新聞が読める、という考え方は悪くない。それでも、今の時代、買う人は少ないと思うけれど。
