「ピルグリム」の初演は1989年。私が大学二年生の時です。演劇をよく見ていた時期なので、「ピルグリム」も見たことがあるかも知れない、と思いながら、シアターサンモールに足を運びました。でも、まったく筋を覚えていませんでした。たぶん、初見です。

「ピルグリム」は2003年に新国立劇場でも上演されました。つまり、今回が3回目となります。それだけ普遍性のある物語だと、鴻上氏が自信を持っている作品なのでしょう。
集団での生きづらさをテーマに、ユートピアを探すストーリー。終盤は、浅間山荘事件を連想してしまいました。あれは革命だからユートピアとは違うよな、と思いましたが、革命とはユートピアの実現を目指すことか、とあとで気づきました。
全体を通じて、黒マント役の伊藤今人の存在感が光りました。昔は大高洋夫の役だったそうで、伊藤が大高に及んだかはわかりませんが、いい味出していました。
秋元龍太朗は昔の藤井隆に重なりました。そういえば、藤井隆は、ゲイキャラをいつのまにかやめています。秋元を見ていると、その理由も少しわかりました。ゲイキャラという設定そのものが、平成前期の発想ですよね。
ストーリーにはSNSが組み込まれ、ダンスも今風。その点で2019年の脚本・演出にアップデートされていましたが、世界観としては1980年代の残り香が漂っていました。棺桶引っ張る冒険はドラクエですよね。きっと。でも、そこがいいんです。
客層はかつて第三舞台を見ていた世代が8割方、いまお芝居をしている若い世代が2割くらい、という感じでしょうか。客席には、ちらほら空席がありました。