「応仁の乱」呉座勇一【ブックレビュー】

言わずと知れた、呉座勇一先生のベストセラー。

応仁の乱で私が一番不思議だったのは、京都という、それほど大きくもない都市で、二つ勢力が10年にもわたって戦争を継続した、という点です。

両軍はそれぞれ堅固な陣地を作っていたそうですが、山岳要塞でもあるまいし、なぜ陥落することはなかったのか。なぜ、戦力的に有意な陣営が、もう一方の陣営を駆逐することができなかったのか。

応仁の乱』(呉座勇一、中公新書)は、私のその積年の疑問に答える戦術的なことは書いていませんでしたが、要するに両軍の戦力が拮抗していたということのようでした。

それと、主力である細川、山名両家が、不倶戴天の敵と憎み合っていたわけではないこと、参加していた大名の興味は京都の占領ではなく、それぞれの領国の拡大にあること、などの要素もあったように感じられました。

応仁の乱

本書は、奈良・興福寺大乗院門主の経覚、尋尊の残した日記をベースに、応仁の乱を読み解いていきます。尋尊『大乗院寺社雑事記』は戦前から研究対象になっていましたが、経覚『経覚私要録』の研究はあまり進んでおらず、本書が評価されているのは、『経覚私要録』の新しい研究の成果をふんだんに取り込んでいるから、ということのようです。

記述は濃密で、全体的に読みやすい本とはいえません。それでも本書がベストセラーとなったのは、辛抱強く読んでいると、やがて視界がぱっと開けてくるような、読後感の広さがあるからでしょうか。


応仁の乱(呉座勇一、中公新書)

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