日本に住んでいる外国人が増えていると感じるのは、今に始まったことではありません。ただ、私が住んでいる東京の城西地区では、そこまで多い、という印象はありませんでした。幼稚園の1クラスに1~2人の外国人がいる程度で、まだまだ超少数派です。
しかし、それは私の住んでいる地域の特徴であって、東京都内全体でみると、話は違うようです。本書『データでよみとく 外国人“依存"ニッポン』によれば、東京都内でも、外国人居住者の割合は地域により全く異なるのだそうです。

「新成人」に限ったデータですが、新宿区では45%が外国人。豊島区が39%、荒川区が28%、江戸川区が10%。対して世田谷区や大田区は5%、目黒区や品川区は4%台に過ぎません。私が見ている「そこまで多くない外国人」という認識は、私が住んでいるエリアに限られた話にすぎないのです。
少子高齢化の時代ですが、東京23区では、20代~30代の若者の人口が増えています。日本中から若者を吸い上げているから……、と思ったら、そうでもなく、日本人の若者数は東京でも減少しているそうです。東京の若年人口が増えているのは、外国人の若者がどんどん移住してきてくれるからです。
このように、「日本人は減っているけれど外国人のおかげで人口全体が増えている」という自治体は地方にも多くあります。よく知られていることですが、国内人口における外国人比率はどんどん高くなってきています。
2011年から2016年に受け入れた新規入国者数は160万人で、ドイツに次いで世界2位。ドイツの878万人には遠く及ばないものの、アメリカの121万人、韓国の95万人をしのぎます。移民が多いイメージのカナダですら47万人。オーストラリアは12万人だそうですから、日本がいかに「移民大国」になっているかがわかります。
こうしたデータを示しながら、現実に日本に住む外国人の生活や、直面している問題を指摘しているのが本書です。
データでよみとく 外国人“依存"ニッポン(amazon)日本政府は、住み着いている外国人のほとんどを、「移民」として認めていません。「いずれ故国に帰る人」という扱いです。そのため、在住外国人対応の施策が後手に回っています。
最近は在日外国人の子どもに対する教育の問題がよく知られるようになりましたが、本書でもそれは紙幅を割いて取り上げられています。
意外だったのは、日本の公立小学校に1年生から入学して馴染んでいた外国人の子供も、小学校4年くらいから授業についていけなくなることが多い、ということ。日常会話レベルの日本語はできても、学校以外で日本語を使わないと上達に限りがあり、とくに教育用語が理解できなくなっていくそうです。それが中学校以降の不登校などにつながっていき、日本社会でうまくなじめなくなっていくというのです。
不就学の問題もあります。憲法上、子どもに教育を受けさせる義務を負うのは「国民」だけなので、「国民でない」外国人籍の親にとって、子どもを日本の学校に通わせなくても法律上問題はありません。そのため手間を嫌う役所は、不登校の外国人の子どもへの対応がおろそかになっているようです。
「学校に通いたくない外国人の子どもは通わせなくてもいい」という態度なのですね。そうした子どもが将来日本に住み続けるのなら、ちょっと恐ろしい未来が想像できてしまいます。
現実問題として、地方の農家や工場は、外国人労働者なくして回らなくなっています。そのことは、本書では実態取材とともにくどいほど述べられています。
移民を受け入れるかどうか議論する段階はとっくに終わっていることを、私たちには認識しないわけにはいきません。いまとなっては、移民が日本社会に住み続けるという前提で、移民の人権を守ると共に、社会を安定させるにはどうしたらいいか。それを議論する段階にさしかかっていることを痛感させてくれる一冊でした。
データでよみとく 外国人“依存"ニッポン(amazon)