釧路の駅前には、新しいホテルが並んでいます。スーパーホテル、ホテルルートイン、少し離れて東横イン、さらに昔からの東急インや地場のホテルもあります。なんでこんなにいっぱいホテルがあるのだろう? というのが率直な疑問でした。

価格競争も激しく、僕が泊まったスーパーホテルは朝食付きで3980円。北海道の地方都市という立地を考慮しても、かなり安いです。
で、夕食を取りに行こうと町へ出たら、ぜんぜん食べるところがない。ホテルがこんなにいっぱいあるというのに、食事をするところがないのです。祝日の夜、ということもあるのでしょうが、旅行者がすっと入れるような店はほぼ皆無といっていいでしょう。
広告
仕方がないので、駅前から続く大通りを歩いてみます。北大通りという名前で、釧路のメインストリートっぽいのですが、空き地や空き店舗が目立ちます。それよりも、午後7時前だというのに、ほとんど人通りがない。大げさでなくて、僕以外視界に人がいなかったりします。釧路は人口20万都市です。いくら真冬だといっても、休日の午後7時に人っ子ひとりいないというのは、かなり悲惨です。

ホテルでもらった地図には、幣舞橋の近くに繁華街があるということで行ってみましたが、どこが「繁華街」なのかわかりません。20万人くらいの都市になれば、歩行者天国のアーケード商店街のひとつでもありそうなのですが、それもなし。「kute」なる商業施設っぽいビルがあるのですが、シャッターが閉まっていて、明らかに空きビルです。

写真左がkuteです。周囲には昼間は営業しているような衣料品店などはあるのですが、全て閉まっています。しかし、祝日の午後7時前に閉まってしまう店って、いつ客が入るのでしょう? ま、そこは東京的な発想で、冬の北海道は違うのかも知れません。
飲食店は結構あるのですが、これも祝日だからから、冬だからかわかりませんが、やはり閉まっている店のほうが圧倒的に多いです。賑やかに開いているのはチェーン系の居酒屋のような店ばかりです。しかし、いくらなんでも釧路まで来て「いろはにほへと」や「白木屋」に入る気もしません。
中心部に幣舞橋という、有名な橋があるのですが、その川辺もご覧の通り。

橋のたもとには、「MOO」という旅行者向けの施設があります。しかし、ここも営業は7時まで。閉店ぎりぎりに入ったのですが、1階に観光客向けの土産物屋が閑散と店じまいをしているだけ。2階に食堂の残骸はありましたが、ほとんど閉店していて、屋台村みたいなところが細々とやっていました。でも、それももう店じまいぽかったです。このMOOは、三セクの再開発事業のようですが、「おまえはすでに死んでいる」の一歩手前でした。
それにしても、いったい、釧路の人たちはどこでメシを食っているのでしょう? 20万人も人がいれば、休日の夜に外食する人はいっぱいいるんじゃないのでしょうか? それとも、北海道では寒い冬は外食しないのでしょうか???
広告
困り果てて、雪道を踏みながら駅に戻り、駅構内で何か食べようかと思いましたが、すでに閉店していました。駅構内すら7時でおしまいですか……。ただ、駅のとなりに、小さな旅行者向けの食堂があり、そこは開いていたので、なんとかそこでカキフライ定食を食べました。この店がなかったら、どうなっていることでしょうか。駅周辺には、ファストフードすらないのです。
後で調べると、釧路は日本でもっとも商店街のゴーストタウン化が進んでいる町とのことでした。「kute」は、かつての丸井今井デパートが撤退したビルで、その後テナントビルにしようとしたけれど、失敗したそうです。
北杜の窓というサイトがあり、それによると、ホテルが増えているのは、釧路の支店を閉めた企業が多く、そのぶん出張族が増えたから、とのこと。駅前のルートインの位置も、かつてはデパートだったそうです。駅前の角地なのですが、そこが宿泊特化型ホテルに変わってしまうあたりに、釧路の閉塞感があるようです。
ただ、付け加えておきますと、帰りがけ、僕は釧路空港から帰ったのですが、空港バスが通った途中の幹線道路沿いには、店がいっぱいあり、24時間営業の店舗も少なくありませんでした。つまり、中心部の衰退は釧路全体の衰退と言うよりは、ドーナツ化が進んだだけなのでしょう。賑やかな幹線道路沿いのネオンを見ながら、少しほっとしました。
メインストリートの北大通も、1980年代くらいまでは、本当に賑やかだったそうです。百貨店がいくつかあり、大型店や書店、衣料品店などが軒を連ねて「大通り」って感じだったそうです。いまは、シャッターとサラ金と空き地ばかりが目に付く中心部ですが、昔はそれなりの繁華街だったのですね。日本の地方の中心街はどこもバブル崩壊後衰退しましたが、釧路は、その象徴なのでしょう。
(2009年1月19日訪問)