八重山諸島では、石垣、竹富、西表の3島が観光的に有名だが、4番目に挙げるとすれば、小浜島になる。八重山で唯一、大規模なリゾートホテルがあるのも、この小浜島である。
ということで、竹富島の観光が思ったより早く終わったので、小浜島に行ってみた。
港は小さく、離島感の強い島である。バスが停まっているが、それはリゾート客専用で、一般客は乗せてくれない。そのリゾートバスをのぞけば、ただの鄙びたターミナルであった。

レンタカーの客引きのお姉さんが二人いる。そのうちの一人を選んで、ついていく。聞けば、彼女は、東京から来ているという。沖縄の観光客店で働いている人は、このように内地から来た人が多い。その理由は2つあって、まず地元の若者は島を出たがるので、雇用できる人が少ない。逆に、島に来たがる内地人の若者もいるので、雇用は内地人とマッチする。
また、内地人は、いい意味できっちりしているので、観光業に向くのだという。八重山の地元の人は、いい意味でおおらかであり、仕事も大雑把。観光業は内地の客を相手にするので、内地の感覚が重要である。そのため、内地人のほうが向いているので、従業員は内地からやってくる若者が多い。
かくして、内地からの観光客は、内地からきたアルバイトからレンタカーを借りて、観光することになる。
さて、小浜島には、さしたる観光地はない。「ちゅらさん」というテレビの舞台になったそうだが、興味のない人には関係がない。が、ひとつだけ、とても興味深いところがあった。破綻したリゾートの跡地である。
ここは、バブル期に開発され、その後複数回破綻したらしい。そのたびに経営者と名称が変わっているが、「コーラルリゾート」「キャロットリゾート」「別荘村サンゴ倶楽部」「小浜島ビーチリゾート」などと言われた。数年前まで実際に営業していて、いまでも、ネットでこの名前を検索すれば、リゾートの痕跡を知ることができる。
島の中心から細い道をたどっていき、北岸に下っていくと、そのリゾート地跡に着く。城壁にオレンジ色の屋根瓦は南欧風で、いっけんのどかなリゾート地だが、コテージには人気がない。ホテルの正面玄関のガラスは閉じられ、荒れ果てたロビーが見える。玄関前の噴水も止まったままだ。


ホテルだけでなく、分譲も行われていたようであるが、多くは空室だ。ただ、いくつかのコテージには人の気配がする。2006年の八重山新報によると、まだ7戸がここで暮らしているらしい。廃墟だらけのリゾート地で暮らす気分はどんなものだろうか、と思うが、気持ち以前に不便だろう。

リゾートの奥には、ビーチがある。小浜島のビーチはほとんどがプライベートビーチで、一般人が入れるのはここだけだそうだ。ここも本来はプライベートビーチなのだが、リゾートが破綻したおかげで、一般人が自由に入れる。しかし、ゴミが散乱していて、率直に言って気持ちいい砂浜ではない。何より北向きであるから、ビーチとしてはあまり優れてない気もする。

プールもある。濁った水が、いまも円形を組み合わせた水槽を埋めている。ここからリゾートの建物を見上げると、その切なさに心を打たれる。これはひとつの遺跡である。このリゾートの栄華は短かっただろうが、たしかにここには一つの時代があったはずである。

島の最高地点から、見下ろしてみる。小さな集落は、遠目には美しかった。