厚狭-長門市 46.0km
長門市-仙崎 2.2km

厚狭駅の駅前のホテルに泊まった。駅の近くには何もない、と楽天トラベルのクチコミに書いてあったが、ホントに何もなかった。新幹線駅とは思えない寂しさである。
美祢線は、この何もない厚狭駅を出て、厚狭川に沿って、中国山地の西端部に分け入っていく。
朝ぼらけの中、川面から靄が立ちこめて、周囲の田んぼを覆っている様は、日本の地方の原風景を思わせる美しさがあった。そういえば、昔、キャンプとかしていた頃は、こういう風景をよく見たなあ。なんだか、とても懐かしい路線であった。

美祢線は、もともとは石炭と石灰の輸送で繁栄した路線である。そのため、交換設備が多く、駅の構内も長編成に対応した広さになっている。いまも貨物列車は運行されているようだが、1日1便程度らしく、ほとんど使われてない古い設備が、もの悲しい。

途中の南大嶺からは、大嶺までの支線が分岐していた。かつて鉱山があったところだが、廃坑の後、1997年に廃止されている。いまも、分岐の跡は残っている。

陰陽を分ける大ヶ峠を抜けると、晴れてきた。普通、山陰のほうが暗くかんじるものだが、今朝の山陰は明るい。
終点長門市着。列車は、このまま仙崎支線に直通する。
仙崎支線は、山陰本線の一部だが、長門市・仙崎間の一駅だけの盲腸線である。列車はほとんどが美祢線に直通している。利用者数は一日90人ほどだそうで、これも廃止が近いようである。
もともとは、仙崎港への貨物線が旅客化したもので、貨物が廃止されても旅客列車だけが運行している。昔は、仙崎港で水産物を仕入れた行商で賑わったそうだが、今はそんな人はいなくなった。行商という形態がいなくなったのは、いつ頃なのだろうか? 少なくとも、僕が子供の頃は、田舎の列車に乗ると、行商のばあさんに出くわすことはあった。
今の仙崎駅は、予想よりも立派な構造で、駅前広場も大きい。かつての繁栄の余韻を残しているが、いまとなっては使いようもないでかい図体を、もてあましているようにも見えた。

美祢線、仙崎支線は、貨物線のイメージが強かったので、あまり期待してなかったのだが、乗ってみると情緒があって素晴らしかった。日本の典型的な地方風景が楽しめる路線である。