欅平上部-黒部川第四発電所前 6.4㎞
竪坑エレベーターを降りると、欅平上部駅である。ここは、上部専用鉄道(上部軌道)の起点で、側線を持つターミナルである。ただ、黒部ダムと反対方面にも線路は延びているので、形としては途中駅になっている。反対方面の線路は黒部川第三発電所に続いている。この写真が、黒部川第三発電所方面。こちら方面には、参加者は乗ることができない。


駅施設は全てトンネル内にあるが、細い通路を歩くと屋外に出ることができる。ここからは北アルプスの峰を望むことができた。


ここを展望台として整備して観光客に開放したい、と地元は要望しているが、実現はしていない。実現には、まず先ほどのエレベーターを観光客向けに整備することから始めなければならないし、通路も拡幅しないといけない。相当な費用がかかることは想像できる。
さて、上部専用線は、欅平上部-仙人谷5.5kmが1941年に開業し、当時の日本電力が建設、運営した。戦後は関西電力が運営し、1963年には、仙人谷-黒部川第四発電所前0.9kmが延長開業。欅平上部-黒部川第四発電所前間が全通した。
参加者が乗るのも、この黒部第四川発電所前方面の列車である。エレベーターを降りると隣に待合室があり、その奥が乗り場だ。ただし、ホームなどはない。


軌間は762ミリで、これは黒部峡谷鉄道本線と同じ。が、トンネルの内径が小さく、車両限界もかなり小さい。電化もしておらず、蓄電式バッテリー駆動車の牽引する客車と貨車によって運行されている。2010年度のダイヤでは、定期列車が1日4往復、不定期列車が2往復となっている。参加者が乗るのは、欅平上部10時25分発の第5列車である。この日は機関車1両に客車6両、最後尾に貨車1両の編成であった。

この機関車と客車、貨車は、耐熱装備の特注である。そのため費用は非常に高く、関西電力の説明員によると、機関車の設計だけで5億円もかかったという。1台あたりの製造費は2億円だが、大量生産をするものでもないので、製造コストは高くなってしまう。耐熱装備をするのは、後述の高熱区間があるからだ。
客車は2004年のアルナ工機製。窮屈に詰めて座って10人程度の小さなものだが、これも耐熱装備なので、1台数千万円もするという。

10時25分発。発車すると、すぐに単線のトンネル区間に入る。小さな客車に詰め込まれて窓の外はよく見えない。途中4つの駅と1つの信号所(交換設備)があるが、列車交換は行われていない。20分ほど走ると、「高熱隧道」と呼ばれる区間に入る。この区間は、建設時には岩盤温度が160℃を超える以上高温となり、大変な難工事であったと伝えられている。

現在は、平行して水路が設置されているので、その効果で30度程度にまでトンネル内気温は下がっている。それでも30度は高温である。ドアを開けて、手を出してみると、たしかに温かい。車両の窓も曇ってしまった。
高温区間を抜けると、列車はトンネルを出て鉄橋の上に躍り出る。ここが仙人谷駅である。
長くなったので、続く。
高熱隧道