列車は仙人谷駅に停車した。

ここは上部専用線唯一の屋外駅である。黒部川をまたく橋梁の上に位置しているためだ。ただ、橋脚上の設備全体に屋根がかけられており、冬季は完全に密閉することができるという。そのため、この区間は冬季でも運休しない。

参加者は駅に降りる。といってもホームはないので、線路の横に降り立つだけである。他の駅はすべて通過するのだが、この駅に停車するのは、単に観光のためか、と思ったら、最後部の貨車から荷物を下ろしていた。

駅からは、仙人谷ダムが見える。糸を引くような見事な水流だ。

ダムの横に古い鉄筋の建物が見えるが、これは関西電力人見平合宿という施設で、ダム関係者が滞在している。貨車から下ろしていた荷物は、この施設に運ばれるのだろう。

駅の上流側で、この施設への引き込み線が分岐している。施設に繋がるコンクリートの道が、この引き込み線である。
いっぽう、ダム下流側には、仙人谷ダム方面への引き込み線が分岐している。つまり、仙人谷駅は、ジャンクションなのだ。
停車中、参加者は写真撮影などをする。同行する関西電力の係員はとても親切で、「カメラ押しますよ~」などと声をかけて回っている。この見学会は「発電施設の理解を深める」のを目的として関西電力が行っているものだ。そのため、関電の係員の物腰は柔らかである。
5分ほどの見物の後、列車は動きだし、再びトンネルに入る。4分ほど走ると、終点黒部川第四発電所前に到着。定刻は10時57分らしいが、1分遅れの10時58分であった。ほぼ定刻といっていい。こんな路線でも定時運行とはすごい。
黒部川第四発電所駅は構内の天井が高く、明るく広々としている。上部専用線全体は暗く狭く窮屈な印象だったが、この駅だけは違う。


もっとも、それはここが黒部川第四発電所の設備の一部だからかもしれない。この発電所自体が、地下に作られた巨大施設なのである。低いながらもタイルの貼られた乗降ホームまであった。
ホームと発電所の入口は直結している。鉄格子の門があり、参加者が通り抜けて内部に入ると、すぐさま閉じられた。

保安体制は厳重である。
高熱隧道