世界で一番遠い島 トリスタン・ダ・クーニャへの旅はできるか

「到達不能極」という言葉がある。文字通り、到達するのが不可能な極地のことである。北極、南極が代表格であるが、現代においてはいずれも踏破されていて、厳密な意味での到達不能極はすでに地球上に存在しない。しかし、一般旅行者にとってみれば、まだまだ到達不能極は存在する。

およそ人類が居住している村で、もっとも外部の旅行者が到達しにくい「極地」を上げるとすれば、英領トリスタン・ダ・クーニャ(Tristan da Cunha)ではなかろうか。イースター島と並んで「世界で一番遠い島」あるいは「世界最遠の孤島」とされる土地である。しかし、イースター島には空港があり定期航空路が開かれている。それに対しトリスタン・ダ・クーニャには空港はなく、船による定期航路すらない。場所は南アフリカの西南2800キロという隔絶の地で、月に一回程度、貨客船が来るだけだという。

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たとえば、今年の船のスケジュールを見ると、11往復の航海が予定されているだけだ。そのうち決定しているのはさらに少なく、ケープタウン発2月17日、4月21日、5月26日、6月30日、9月8日だけである。残りの航海は船会社との契約がまだ決まっていないようだ。

「船」とはいうものの、客船ではない。これが、契約の決まっている船「MV Edinburgh」 である(http://www.tristandc.comより)。どうみても貨客船で、事情をしらなければ貨物船にしか見えない。

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そして、航海には驚くほど時間がかかる。たとえば2月17日のケープタウン発の船に乗ったら、島に到着するのは2月23日である。そして帰りの船が島を出るのは3月17日。到着まで6日もかかったあげく、島に20日以上も滞在しなければならない。もっとも島の滞在期間が短い場合でも、4月27日着5月2日発などの6日間である。往復で各6日かかり、滞在が最低6日であるから、少なくとも18日がかりの訪問になる。

島の人口は200人あまり。そんな島に長いこと滞在して何をするか、は旅行者次第だが、いちおうゲストハウスもあるという。島のホームページを読んでいると、旅行者向けへの注意事項がかなり多いので、それなりに旅行者もいるのだろう。そしてその注意事項を読めば読むほど、フラッと行けるような場所ではないことがわかる。

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こんな極地を、NHKの番組「プレミアム8 世界一番紀行」で紹介するという。「世界一番紀行」は、世界で一番北とか南とか暑いとか寒いとか紹介してきたが、そういう極地紀行はどれもおもしろかった。今回もぜひ期待したい。

ところで、トリスタン・ダ・クーニャを紹介した本は日本にはない。荒巻義雄の「架空戦記シリーズ」の舞台設定として登場するくらいである。滞在記としては、洋書ではあるが、「Three Years in Tristan da Cunha」がある。また、ガイドブックとしては、「ロンリープラネット 南極 Lonely Planet Antarctica」に、トリスタン・ダ・クーニャが紹介されているので、「どうしても行きたい!」という人は読んでみるといいだろう。

ガイドブックもあるのだから、トリスタン・ダ・クーニャへの旅は不可能ではないが、相当に困難であるようだ。実際に島を訪れる観光客のほとんどは、クルーズ客船か、ヨットなどの「非公共交通機関」で立ち寄っているようである。



以下、番組紹介

BShi 2月9日(水)午後8:00~9:30
プレミアム8 世界一番紀行「世界で一番“遠い”島 トリスタン・ダ・クーニャ」

南大西洋に浮かぶ、英領トリスタン・ダ・クーニャ島は、人が定住する他の陸地から、世界一遠い有人島。俳優の粟野史浩さんが“絶海の孤島”の暮らしと驚きの歴史に迫る。
南大西洋の真っただ中に浮かぶ、英領トリスタン・ダ・クーニャ島。人が定住する他の陸地から、世界一遠く離れた有人島である。空港はなく、島へ行く定期便は、南アフリカのケープタウンから、1年に、たった10回運行される貨物船だけ。人はなぜ、こんな“絶海の孤島”に住んでいるのか? この島を題材にした芝居に出演したことがある俳優・粟野史浩さんが、“絶海の孤島”の暮らしと驚きの歴史に迫る。
http://cgi4.nhk.or.jp/topepg/xmldef/epg3.cgi?setup=/bs/premium8-wed/main

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