倶知安から、再び函館本線山線に乗り、長万部へ抜ける。今度はキハ150の2両編成だった。
驚いたことに、大混雑である。列車は小樽からの運転で、倶知安から乗った僕はようやく通路側の席を確保したが、立っている客も多い。倶知安-長万部間は運転本数も少ないから、青春18きっぷのシーズンは混むのかしらん? と思ってはみたが、どうも客層が妙である。

中高年の夫婦が多い。が、通常こういう組み合わせはローカル列車に乗らない。後でわかったことだが、読売旅行という旅行会社の団体ツアー客だった。最近はローカル線を日程に組み入れたパッケージツアーが増えているが、その類のようである。人数は30人くらいだった。
ローカル線で、こういうツアーに乗り合わせるのは、個人客としては不運である。ローカル線は適度に空いているから楽しいのであって、数十人のツアー客と乗り合わせたら落ち着かない。
しかし、当たり前のことだが、ローカル線の客が増えるのは悪いことではない。というより、こうしてはるばるとやってくる観光客が増えるのは、鉄道会社にとって、とてもいいことであり、それがローカル線の収支に好影響を及ぼせば、ローカル線愛好者にとってもいいことである。
そういう理屈は思い浮かぶが、しかし立ち客が出るほどの大混雑のローカル線に乗り合わせてしまったら、やはり不運として考えてしまう。マクロの利益とミクロの利益は必ずしも一致しない。
車窓左手に、羊蹄山が美しい山容を見せている。しかし、通路側の席からでは、あまり落ち着いて鑑賞もできない。僕は窓ガラスの先に向かって、なんとかシャッターを切った。

一般乗客がニセコや黒松内で降りていき、少し車内が落ち着いたと思ったら、もう長万部である。途中、峠越えの名所もあったのだが、残念ながらあまり堪能できなかった。

長万部で、ツアー客たちは特急「北斗14号」で函館に向かっていった。「なんだ、鈍行に乗るなら函館まで鈍行で行かないのか」と思ったが、内心ほっとした。函館までこの混雑だったらどうしようか、と思ったからである。
個人客は、団体客がいなくなれば空いていて快適なローカル線の旅を楽しめる。しかし、団体客のローカル線の旅は、常に混雑してしまう。いったい、そんな列車に乗って、ローカル線を楽しめるのか、疑問に思わないでもない。
長万部から函館へのキハ40はガラガラで、数少ない旅行者は思い思いにボックスシートで車窓を眺めていた。
北海道 化石としての時刻表