五稜郭 - 江差 79.9km

JR北海道から明らかにされた輸送密度資料で、もっとも衝撃的だったのが江差線だろう。2005年に報じられた同線の木古内-江差間の輸送密度はわずか64人(1日1キロあたり。以下同)、というのだ。近年はさらに悪化しており、北海道新聞(2010年9月10日)が報じたところによると、2009年度の輸送密度は、なんと49人であるという。鉄道どころか、バスでも経営が成り立つかどうかという水準である。
ここまで乗客の少ない路線がなぜ維持されているのかは謎としかいいようがないが、JR北海道はどういうわけか、路線の廃止を行わない。そのため、この全国屈指(おそらく最低の)過疎区間は、現在も営業を続けている、というわけだ。
しかし、いつなくなってもおかしくないので、今回乗ってみることにする。低気圧の近づいている、12月の北海道で、朝から雪が降り続いていた。
函館朝6時53分発の120D列車は、キハ40の単行である。

20人くらいの乗客がいて、思ったより多いな、と驚く。上磯を過ぎたあたりから夜が明ける。津軽海峡の荒波の向こうに、函館山が偉容を見せる。この区間は道内でも指折りの景勝区間だと思う。
1時間ほどで木古内着。ここでほとんどの乗客が降りる。青春18きっぷ組が大半だったようだ。この列車は青春18きっぷでの津軽海峡線の接続が良く、3時間足らずで青森に到達できるから利用者が多いのだろう。
木古内からが、江差線過疎区間である。津軽海峡線の堅牢な高架を横にみながら、渡島半島の山地に分け入っていく。乗客はほんの数人になった。

豪雪の峠。

昭和製のエンジンを唸らせながら登っていく。
それを越えると、天ノ川という川沿いに出る。

川沿いに下っていき、江差に到着する。見応えのある、静かな小山岳路線であった。

江差は20数年ぶりである。前回はたぶん夏に乗ったと思うが、冬のほうが迫力のある路線であった。
ちなみに、江差線のうち、「津軽海峡線」を構成している部分の輸送密度は高く、五稜郭口では5000人程度は維持している。そのおかげで、末端過疎区間もしばらくは安泰、という考え方も多い。ただ、建設中の北海道新幹線が新函館まで開業した場合、同線全体の輸送密度は671人にまで減少するという試算もある。五稜郭-木古内間が並行在来線に該当することもあり、新幹線開業後は江差線全体が廃線になる可能性もある。
北海道ローカル列車の旅