南大東島・洞窟探検記(2011沖縄・南大東島旅行記7)

いよいよ星野洞の内部に入る。

が、その前に、なぜ南大東島に巨大な鍾乳洞があるのかを説明しておく。

南大東島は珊瑚礁が隆起してできた島である。珊瑚礁の主成分は炭酸カルシウムであり、堆積すると石灰岩になる。そのため、南大東島の地面はほとんどが石灰岩でできている。

石灰岩は雨に溶けやすい。なぜなら、炭酸カルシウムは酸に溶けやすく、雨には微量の二酸化炭素が含まれているからだ。そのため、雨水が石灰岩の地面に染み込むと地下に穴が空いてしまう。それが洞窟になる。

炭酸カルシウムを溶かし込んだ水は洞窟の中で二酸化炭素を脱気し、方解石という鉱物を沈積させる。この方解石が、さまざまな二次生成物を作る。そうした二次生成物の代表例が「鍾乳管」や「鍾乳石」で、それらが多彩な洞窟を「鍾乳洞」と呼ぶ。そのため、南大東島には鍾乳洞がたくさんあり、なかでも巨大なのものが星野洞、というわけである。

「鍾乳管」は、洞窟の天井から細長い管のように垂れ下がっていて、「ストロー」ともいわれる。星野洞には、長さ日本一のストローがあるらしいが、残念ながら、観光洞部分からは見ることができない。

そして、ストローの外側に地下水が垂れていくと、「鍾乳石(つらら石)」になる。星野洞には、林のような鍾乳石があちこちにある。
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「石筍」も鍾乳洞内に生成される代表的な二次生成物である。天井から落ちてきた地下水が飛び散るときに、水滴の二酸化炭素が抜け、方解石が沈殿することによって生成する。そのため上方向に伸びていく。

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「鍾乳石」と「石筍」が上下からそれぞれ成長し、一本につながると「石柱」になる。
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ヒダをもって垂れ下がっている生成物は「カーテン」という。傾斜のある天井から地下水が流れるときに形成される。白と茶色の縞模様になっているが、白い所は方解石の純度が高く、茶色いところは純度が低く不純物が多い。
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「フローストーン」は、滝のように石が流れているように見える生成物で、巨大なものは洞窟のハイライトにもなる。壁に炭酸カルシウムの溶けた水が流れるとき、炭酸カルシウムの成分が結晶して形成される。断面が縞模様になっているのは、形成する過程が不連続だからである。星野洞には白く美しいフローストーンをいくつも見ることができた。
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僕は大学時代に探検部に所属してケイビング(洞窟探検)をしていたので、これまでにいろんな洞窟に入ったことがある。観光洞だけでなく、非公開の洞窟にもたくさん入った。それをひとつひとつ思い返してみるが、二次生成物の豊富さ、美しさ、ホールの広さなどを総合すると、ここより美しい洞内を見た記憶がない。つまり、僕の見た限りでは、星野洞は「日本一の鍾乳洞」と表現して差し支えないと思う。少なくとも、観光洞としては秋芳洞よりも美しく保存されていて、日本一だろう。

観光洞以外を含めると、もっとすばらしいところもあるだろうが、そういう場所は照明が整備されていないから、内部の広がりを楽しむことはできない。それも勘案すると、目で見て楽しめることのできる鍾乳洞としては、ここが日本一であろう。
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星野洞は広い。ゆっくり見ていると、見物に1時間はかかってしまう。その間、他の観光客は一人も来なかった。広くて美しい洞内を独り占めできるわけで、その点でもすばらしい。あとで管理人に聞けば、平日はほとんど観光客は来ないとのことだ。なんとももったいない話である。

星野洞のほかにも、南大東島には無数の洞窟がある。ある洞窟の奥には、地底湖まで存在するという。そして、希望すれば、観光客であっても地底湖を見ることができる。そのためにはケイビングの装備とガイドが必要だが、そのいずれもが南大東島には用意されていてツアーになっている。つまり、一般人がガイド付きで洞窟探検できるのである。こういう「体験ケイビング」をさせてくれる洞窟は、日本でも数少ない。その意味でも、南大東島は、貴重な「洞窟探検の島」といえる。

洞窟探検入門
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