津波を受けた東北の鉄道路線は復旧するのか

学生の頃、常磐線から三陸縦貫線を乗り継いで、青森まで太平洋沿岸の旅をしたことがある。美しい海を長めながらの鈍行列車の旅は、それはそれは素敵だった。
しかし再び、そんな旅はできそうもない。

JR東日本から発表された「津波を受けた7線区の点検状況」を見ると、津波被害の深刻さがわかる。

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(写真は常磐線坂本駅。JR東日本提供)

これまでに確認された被害箇所は720カ所。それも駅舎の消失や路盤の流出など、鉄道設備をいちから作り直さなければならないような被害が列挙されている。これをすべて再建するには途方もない時間とお金がかかることだろう。

いっぽう、津波による市街地の消失で、沿線人口は激減している。高台に集団移住しようという動きもある。となると、人の少なくなった太平洋岸の集落を結ぶ鉄道が復旧されるかどうかは疑問である。仙石線のように間違いなく復旧されると思われる路線もあるが、三陸のローカル線については怪しい。長期間休止という名目で、事実上の廃止になってしまう路線もあるのではないか、と思う。とくに、気仙沼線と、山田線宮古-釜石間は、このまま廃止になるのではないか、と心配している。

どう考えても採算の取れないこれらの区間を、新線建設同様の投資をして再開させるメリットはJR東日本にはない。公共鉄道事業者の使命はあるだろうが、これらの区間は鉄道がなければないで困るほどの土地でもない。全額を税金で復旧してくれるなら再開するだろうが、そんな余裕が国や自治体にあるのだろうか、とも思う。

三陸鉄道はさらに深刻である。

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(トンネルから熊野川を越える高架橋が落下した三陸鉄道南リアス線=岩手県釜石市で2011年3月31日、稲垣淳撮影)

上の写真は、毎日jpに掲載された南リアス線だが、このような状況を見ると、現在運転を再開している区間をのぞけば、復旧の見込みはないと思わざるを得ない。JRと違って自社の体力はゼロに等しいので、復旧は税金頼みだ。しかし、30年前ならともかく、現在の三陸鉄道に新線建設並みの復旧費用を投じる必要性は低いし、沿線自治体の負担能力も失われている。そんなお金があるなら、被災地の復旧に優先的に使われるべきだろう。

そして絶望的なのが、常磐線である。四ツ倉-鹿島間は、原発からの避難区域に入っていて復旧以前の問題である。常磐線は、福島第一原子力発電所から3キロほどの距離を走る区間がある。現地の放射能汚染はあまりに深刻で、これまでに途方もない放射性物質が沿線にまき散らされてしまった。そして、それは当分やむことはないであろう。原発近辺は長期間立ち入り禁止になるのは避けられず、当然、常磐線も走ることはできない。

常磐線の復旧予定を見て思うのは、JR東日本の用心深さである。半径30キロ圏外でも、汚染が心配されているエリアの復旧工事には手を付けてない。

僕は以前、原発の問題はあっても、常磐線の原ノ町-岩沼間は遠からず復旧されるだろうと思っていた。しかし、現実に復旧予定に入っているのは亘理-岩沼間だけであり、原ノ町-亘理間は放置である。政府の発表によれば、この区間は「安全」なはずである。

JRですら、政府を信用していない、ということなのだろうか。

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