「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を構成する関連遺産は26カ所あるが、そのうちの7カ所は五島列島にある。歴史的に見ても、五島列島は本土を追われたキリシタンが多数逃げ込んだ土地であり、キリスト教をテーマとした世界遺産紀行であるならば、五島列島へ渡らないわけにはいかない。
五島列島の主島は福江島である。福江島へは、長崎から一日数便の船がある。高速船なら1時間半ほどだが、フェリーでも3時間半で着く。乗り物としてはフェリーのほうが楽しいので、フェリーに乗る。この4月17日に就航したばかりの新造船「万葉」であった。

船内はシンプルで、カーペットの2等船室のみのモノクラスだ。
指定席もあるが、個室になっているだけでカーペット船室に変わりはない。そのほかに、「バリアフリー席」として20席ほどの椅子席がある。食堂はなく、ロビーの片隅に自動販売機と小さな椅子テーブルがあるだけだ。案内所を兼ねた売店もなく、ただの案内所だけである。

バブルの頃、フェリーは豪華化が進んだ。地方航路でも1等船室ができたり、食堂や売店、ゲームセンターもつきものだった。が、実際はそういう施設はほとんど利用されていない。平成の時代の日本の現状にあわせると、こういうシンプルでバリアフリーの船になるのだろう。ただ、昔のフェリーのほうが、乗っていて楽しかったな、と思う。船内で「探検」のしがいがあったのだ。
「万葉」を先代の「フェリー福江」に比べると、旅客定員は630名から432名に減っている。3割も定員が少ない。これも時代の変化だろう。実際、船内をぐるりと歩いてもすぐに全部見終わってしまうコンパクトな船であった。

ただ、船のトン数は以前より実質的に2割程度大きくなっているのだという。車両の積載数は変わらないので、そのトン数はどこに使われているのだろうか、と疑問に思わないでもない。「高速省エネ船」といううたい文句なので、そのための設備に使われた、ということなのだろうか。
天気は快晴で、海もないでいて、航海は快適だった。船の先頭に展望スペースが設けられていて、そこの椅子に座っていると航海気分が盛り上がる。


長崎を出て3時間、いよいよ福江島が見えてきた。