モファット・トンネルを抜けると、列車はロッキー山脈から駆け下がる。この下りはかなり急峻で、短いトンネルをいくつもくりぬきながら、左右にくねくね曲がりつつ標高を下げていく。トンネルの数は25個。アメリカでは多い方だ。一般に、古い鉄道路線ほどトンネルは少ない。


トンネル群の合間には、遠くコロラドの大平原が見渡せる。神々しいまでに美しい。

ずいぶん眼下にあった大平原が、だいぶ近くになってきた頃に、列車は二つのヘアピンカーブを曲がる。ひとつがリトルテンLittle Ten、もう一つがビッグテンBig Tenと呼ばれている。「テン」は曲線度数10度(弦100フィートで中心角が10度となる曲線)から来ていて、半径175mに相当する急カーブだ。



この連続カーブは、アメリカの鉄道屈指の名所として知られている。
これから走るレールがすぐ眼下に見える。ループ線ではないが、それに近い。列車は速度を落として、ゆっくりゆっくりと走る。時速30キロくらいじゃないかと思う。

これを下りきると、難所は終わりである。急に住宅やクルマが増えてくる。
列車は速度を上げた。もうすぐデンバーである。ちなみに、フレーザー/ウィンターパーク駅~デンバー間は99.2キロもあるが、この間に駅はひとつもない(信号所はある)。100キロ近くも駅がない、というのは、大陸だなあ、と思う。