北海道新幹線の並行在来線、木古内-函館-小樽はどうなるのか。

北海道新幹線の札幌延伸に伴う並行在来線問題が山場を迎えている。

これは、北海道新幹線の新函館-札幌間が、いよいよ着工認可されることに伴うものだ。同区間が完成すれば、並行在来線となる函館本線の函館-小樽間がJRから分離される。

これに対して、余市町と函館市だけが同意してなかった。両市町とも、新幹線の札幌延伸で具体的なメリットはなく、並行在来線が第三セクター化されれば地域負担が増えるだけだからである。両市町が同意しなければ、着工認可は下りない。その同意を巡り、北海道では地元議会などで緊迫したやりとりが続いている。


では、北海道新幹線が札幌まで全通した場合、函館本線と江差線はどうなるのだろうか。

僕はこれまで、単純に「木古内-函館-長万部」が分離されて第三セクターになり、「長万部-倶知安-小樽」が廃止になると思っていた。(小樽-札幌はJRによる運行継続が確認ずみ)。また、それに伴って並行在来線でない「木古内-江差」も廃止になると予測していた。

しかし、どうも必ずしもそう決まった話ではなく、混乱している。

これまでの報道で出ている話をまとめる。まずは江差線。
・木古内-五稜郭間について、北海道が旅客輸送の「バス転換」を地元に提案(10月31日)
・木古内-五稜郭間について、第三セクターを設立し、貨物専用線として施設を保有し、JR貨物が利用することが望ましい、と北海道議会で道側が答弁(12月6日)。
・木古内-五稜郭間について、高橋はるみ知事が議会で「地域住民の思いに配慮しながら、事業形態について一定の見直しを行う」と、上記提案を撤回とも取れる答弁(12月7日)
・木古内-江差間について、JR北海道の小池明夫社長が、北海道新聞の単独インタビューに答え「鉄道として絶対になければ困るという地元の強い要望があれば、そういうことになる」と、引き続き同社が運行する考えがあることを示す(北海道新聞12月9日)

要するに、おおざっぱにまとめると、木古内-五稜郭間は第三セクターになり貨物専用線にしたいが、地元が反対しているので旅客列車が通る可能性も匂わせている。木古内-江差間はJRのまま存続、ということになる。

いっぽう、北海道新幹線が札幌まで延伸された場合は、新函館-函館間が電化され第三セクターとして旅客運行が継続される、との提案がなされている。新函館-小樽間については報道がないが、江差線の例を見ると、新函館以北も貨物専用線の提案がなされる可能性は高い。


ここまでの内容をまとめると、北海道新幹線札幌開業時には、函館駅からJRは撤退し、道南部では木古内-江差間だけにJR北海道の在来線が残ることになる。木古内-江差間はJR全体の中でもワーストクラスといえる過疎路線であるだけに、この構図は奇妙である。JRが木古内に江差線のためだけの拠点を残せば、さらに江差線の採算は厳しくなるだろう。

そう考えると、現段階で木古内-江差の廃止を打ち出すと話がややこしくなるので、とりあえず「存続」を宣言しただけかもしれない。新幹線開業後、あまりに旅客が少なければ、改めて廃止が提案される可能性もある。


ところで、こうした混乱の根本的な原因は、北海道での在来線の経営がとてつもなく困難である、ということにある。木古内-函館-小樽間は北海道内でも人口の少ないエリアで、この区間の在来線輸送だけでは、経営は絶対に成り立たない。

今はまだ提案されていないが、さらに問題になりそうなのが長万部-小樽間である。この区間は、旅客も少なく、貨物輸送もない上に、山岳路線で維持費もかかる。財政難の北海道にこれを維持するだけの体力があるとも思えず、最終的にはバス転換が提示されるだろう。余市町が経営移管への「同意」に二の足を踏んでいるのも、それを予測しているからに違いない。

冷静にみれば、木古内-江差間や長万部-小樽間の在来線輸送をバス転換するのは合理的といわざるを得ないのも事実である。ほとんど使われていない鉄道に税金を注ぎ込むことが妥当かどうか、を納税者の立場から考えれば、廃止に反対するのは難しい。

ただ、北海道の姿勢は誠実ではない。木古内-五稜郭間も、鉄道輸送を前提として地元同意を取り付けていた。それを、直前になってバス転換、といえば地元が怒るのは当たり前だ。同様なことが長万部-小樽間でも起こらないように、北海道は、今から誠実にバス転換の可能性があることを説明すべきではないだろうか。

それにしても、今回の混乱を見るに付け、新幹線が開業したら在来線は第三セクターに移管する、というスキームは、少なくとも北海道では失敗だったと思わざるをえない。

整備新幹線は必ずしもバラ色ではない。それはすでに過去にいくらでも例がある。新幹線を導入するかどうかは地域の「選択」である。新幹線の敷設を「要望」する時代は、とっくに終わっている。

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