就職活動をしていた頃、寝台急行「銀河」で上京し、着いたその足で新聞社の筆記試験を受けたことがある。少し寝足りないと思いながらも問題なく受験できたし、その新聞社には合格したので、21歳の頃の僕は、寝台列車でそれなりに眠れていたことになる。

が、42歳になった僕は、夜行列車に乗っても熟睡できなくなっている。サンライズ出雲の285系電車は比較的新しい車両だが、列車である以上かなり揺れる。駅に停車したら、「がくん」という特有の衝撃もある。そういうことで、僕は浅い眠りで何度も目覚めながら夜を過ごした。
翌朝午前6時過ぎ、岡山到着前に車内放送があった。その放送の音量がとても大きく、かつ、とても長かった。列車が7分ほど遅れて運転していたのだが、その遅れの理由とお詫びを延々と放送し、さらに接続列車の対応やら、岡山駅での停車時間が短くなったので注意せよやら、たぶん5分くらいは放送していたと思う。おかげで完璧に目が覚めてしまった。
眠るための列車なのだから、放送をオフにするスイッチがあったらいいのに、などと考えながら起きる。まあ、今日はこの後筆記試験があるわけではないので、眠れなくても大きな問題はないのだけれど。
岡山駅では、併結していた「サンライズ瀬戸」を切り離す。

ホームに出て切り離し作業を眺めてから、個室に戻る。再び寝ようと横になるが、もう眠れない。列車は伯備線に入り、車両の揺れは大きくなった。朝の光も差し込んできて、これはもう眠るどころではない。
鳥取県に入ると雪景色になり、中国山地を抜けて日本海に近づくにつれて雪は消えた。この時期は天気が荒れやすいが、これは幸運。どんよりとした天気だが、雪も風もない。なんとか右手に宍道湖が見える。

9時58分、定刻に終点出雲市着。遅れは取り戻していた。

終点まで乗っていた乗客は多い。女性のグループも目立つが、みな出雲大社へ行くようである。ブームなのだなあ。