和歌山電鐵「たま駅長」はお昼寝中 (2012年さよなら寝台特急「日本海」旅行記4)

和歌山電鐵は、「たま駅長」で知られる。といっても、昔からそういう「狙った」鉄道会社ではなかった。少し前までは、南海電鉄貴志川線という地味な名前で、南海カラーの電車が地味に行ったりきたりしていただけである。
和鉄6

南海といえば大手私鉄なので、ローカル線といえども安泰かと思われていたが、2000年代になって、「赤字路線のため手放したい」と表明した。困った地元は引き受け手を探し、岡山電気軌道がそれに応じて和歌山電鐵という会社を作って営業を存続した。和歌山のローカル線を岡山の私鉄が運営することになったのである。なら地元でやればいいじゃん、とも思うけれど、和歌山には適当な地方私鉄がなく、ローカル線の運営ノウハウがなかったのだろう。

2006年に新生和歌山電鐵はスタートし、生き残りを賭けて、独特の営業施策を展開した。たま駅長は、その目玉である。車両にも工夫をこらし、南海から譲り受けた車両のデザインを変更して、「いちご電車」「おもちゃ電車」「たま電車」などとしてリニューアルした。デザイン担当は今や列車デザインの大御所となった水戸岡鋭治である。そういういろんな施策を展開していて、和歌山電鐵はローカル私鉄として独特の立ち位置を占めるまでになった。
和鉄1

僕は地味な「南海貴志川線」を時代を知っている。なので、そうした次々と繰り出される施策に驚いて、もう一度乗ってみよう、ということで和歌山にやってきた。寝台特急「日本海」とは何の関係もないが、「ついで」も旅のうちである、と強引に結び付ける。

りんくうタウンから日根野にて乗り換えて、紀州路快速で和歌山着。和歌山駅は、県庁所在地では珍しくなった地上駅舎で、ターミナルビルは懐かしい高度成長時代の雰囲気を残している。

駅前は近鉄百貨店があるほかは、大きな商業施設はない。基本的に、20年くらい前からあまり変化がない気がする。

和歌山電鐵ホームには、たま電車が停車していた。白いネコをイメージした外観で、車内は木目調の壁やシートがあり、細かなあしらいがある。2009年にリニューアルされて投入された車両だが、もともとは1968年の製造。じつに43年前のものである。そんな古い車両を化粧直しして普通に使えてしまうのだから、鉄道車両というのは長持ちする。

車内はそこそこ混雑している。車内はシートの形など至る所に「ねこ」がデザインされている。狭い運転台に窮屈そうに運転士が座り、出発。
和鉄2
和鉄3


住宅街の中を南に抜け、やがて東へ進路を変えて向かっていく。途中の岡崎前くらいまでが和歌山市の市街地で、山東をすぎると山がちになる。そして少しまた開けてきたな、と思うと、終点貴志であった。所要時間は30分。正直、路線自体はとくに目立つものはなく、相変わらず地味である。

貴志駅舎は、建て替えられて新しくなっている。
和鉄5

古い駅舎も味があって好きだったが、今の駅舎も洗練されていて良い。「たま駅長」はガラスの中にてお昼寝中であった。
和鉄4

帰りは一本遅らせて、別の車両に乗る。今度は、南海電車の塗装のままであった。これはこれで、昔の通勤電車の味がある。ただ、のっぺりとしたロングシートの車内には魅力はなく、殺風景である。行きと同じような退屈な車窓が続き、始発駅の和歌山に戻り付いた。

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