十和田観光電鉄は、不思議な鉄道である。
ネーミングは十和田湖への観光客を狙っているのだけれど、この鉄道で十和田湖に行こうとすると不便である。というか、困難ですらある。実際、十和田観光電鉄を使って十和田観光をしようとする人はほぼ皆無だ。

会社のほうも観光客を誘致しようとする工夫はしておらず、観光客向け列車もない。旧東急のステンレスの通勤車両をお下がりで使用しているだけである。トロッコ列車とか、そういうイベント的な列車は一切ない。
沿線に大きな都市もない。起点の三沢市は人口4万人、終点の十和田市は6万人である。こんな小さな地方都市間を結んでいるだけなのに、21世紀までなんとか廃止されずに生き延びてきた。列車の運行本数も比較的多く、日中でも1時間に1本程度は運転されている。
これでいったいどうやって利益を出しているのか、謎であった。いや、さすがに利益を出していないにしても、どうやって赤字を最小限にとどめているのか、とても不思議な鉄道路線であった。あまり良い表現ではないが、「しぶとい」鉄道会社だな、となんとなく思っていた。
が、そのしぶとさも限度に達したようで、2012年3月限りで廃止されることが決まった。残念だけれど、よくここまで残ってきた、という印象のほうが強く、意外感はない。
僕としては、数年前に一度乗ったことがあるだけなので、最後に乗ってみることにする。幸いなことに、「日本海」は定刻に青森に着いたので、今日は一日時間があった。