苦労してチケットを手に入れたものの、冬の東北・北海道方面の心配事は雪である。強い雪が降ると、寝台列車は真っ先に運休が決まる。大雪の予報がでるだけで運休が決まることすらある。寝台列車は乗車率が悪いから、待ってましたとばかり運転を取りやめているんじゃないかと思うほどである。

とくに、この2012年の冬は大寒波が襲来していて、北日本の鉄道路線は豪雪でしょっちゅう寸断されていた。僕の乗車予定は2月3日の金曜日だったけれど、じつは、その前々日の2月1日水曜日の札幌発の「カシオペア」も、運休していたのである。
「カシオペア」が使用するE26系客車は1編成しかない。そのため、運転日は1日おきで、上野発が日・火・水、札幌発が月・水・土である。木曜日はどちらからも運転しない。ならば、水曜日の列車が札幌から上野に来られなければ、車両は札幌に置き去りだから、金曜日の上野発の列車も発車できないことになる。そのため、運休するのではないか、と心配した。
だがJR東日本のホームページを見ると、「カシオペア」の運休情報は掲載されていない。運用上の理由で運休が発生する場合は、早めに情報が掲載される。それがないということは、運転される見込みであるということだ。つまり、本来なら運転予定のない木曜日に、わざわざ札幌から上野まで回送してきた、ということのようである。
「カシオペア」の上野の発車時刻は、定刻なら16時20分である。その30分ほど前に上野駅に着いたが、出発案内の電光掲示板から「カシオペア」の文字がない。駅員に尋ねると、遅れが発生していて、発車は17時39分になるという。札幌から回送してきたのであれば、今朝には車両が東京の車庫に着いているはずだが、遅くなっているのだろうか。あるいは、木曜日に行うはずの点検を、今日行っていて、時間が足りないのかもしれない。
構内の喫茶店で時間をつぶしてからホームに行くと、たくさんの客がカメラを構えている。とはいえ、先日の「日本海」のような殺気だった雰囲気はない。これからお出かけする人が、楽しみに記念写真を撮っている、という感じである。
そこへ、ゆったりと、カシオペアが入線してきた。客車が先頭で、機関車が最後尾についた推進運転である。推進運転で列車がホームに入線する姿は懐かしい。今や上野駅での寝台列車だけかも知れない。大勢の乗客がカメラを構えるなか、そろりそろりと最徐行でホームに現れる姿を見ると、まだまだ「スター健在」の風格である。