

鉄道の全線乗りつぶしをしていて、最後まで残るのはどんな路線だろうか。ごく普通に考えれば、不便なローカル線だろうと思ってしまう。実際、僕もそう思っていた。
しかし、現実に乗りつぶしという作業を進めていくと、それが間違いであることがわかる。遠隔地にある地方ローカル線は、意外と早く片づいていく。理由は明白で、ローカル線に乗るのは大変だけれど、乗るのは楽しいし、楽しい作業は早く進むからだ。
いっぽう、東京や大阪の郊外路線は乗ってもあまりおもしろくない。しかも、何かの用事で近くに行くこともあるから、そうした「ついで」を待っているうちに、ますます乗り残すことになる。たとえば、武蔵野線のように、わざわざ乗りに行くほどではないけれど、ついでの用事も少ないような大都市近郊路線が最後に残りがちである。それでも、全区間が残っていれば、その距離自体が魅力となって乗りに出かける原動力になるのだが、一部区間だけ乗ってしまっていたりすると、出かけるモチベーションが湧いてこない。かくして、大都市近郊路線の一部区間が中途半端に残されてしまうのである。
そうなると、たとえば全線完乗を達成する区間が「西国分寺-府中本町間」などという中途半端な場所になることも考えられる。どこを最後にしても完乗は完乗だけれど、できればそういう区間ではないほうがいい。最果てのローカル線で「ようやく終わった」という達成感に浸りたいものである。興味のない人にはきわめてどうでもいいことだと思うけれど、わかるに人はわかると思う。
ということで、僕は完乗が近づいてきた数年前から、最後の区間をどこにするかを考えていた。とはいえ数年前の時点で、すでに「最果てのローカル線」と言えるような区間はほとんど乗ってしまっていた。できることなら行き止まりの盲腸線が「達成感」が高まりそうなのだけれど、盲腸線もほぼ完乗してしまっていて、選択の余地はあまりない。留萌本線は、ぞのわずかに残された盲腸線のひとつであった。こうして、僕は完乗地を留萌本線の終点増毛と決めて、最後まで乗らずにおいておいたのである。