
JR全線を完乗した。
とはいうものの、あんまり感慨はない。いつものように列車に乗って、いつものように終着駅に着き、寂れた駅前広場を見ただけであった。
そんなことよりも、腰を抜かすのは増毛の町の雪の積もり方である。通りを歩いてみると、除雪しても捨てるところがなくて困っているんじゃないか、と思うほど雪だらけである。冬の北海道には毎年のように来ているし、今さら積雪には驚かないけれど、増毛の雪の積もり方は、人を圧するような迫力があった。山間部ならともかく、増毛は港町である。それでこんなに積もっているとは。

そして、そんな町でも、歩行者はいて、高校生が大声で楽しそうに歩いている。死んだように静かな雪の世界で、動いている人間を見るとほっとする。見かけたのは、ほんの数人だけれど、なぜかとても活気のある町のように思えた。
こうして、JR全線完乗は達成された。繰り返すけれど、これといった感慨はない。まあ、列車に乗っていれば誰でもできることなので、たいしたことではないのだな、ということを再確認したわけである。チョモランマに登るのとはわけが違う。
しかし、あまりにも感慨がないので、無理矢理盛り上げようと、「終わった~! 全線完乗だあ~!! やっほー!」などと叫んでみる。が、そんな叫び声すらも、積もりに積もった雪の中に、吸い込まれていくかのようであった。