
縄文杉登山のときにひたすら歩いたトロッコ道。
「このトロッコで大株歩道まで運んでくれたらなあ」と思った人は、僕だけではないはずです。
では、このトロッコはどこから始まってどこまで続いているのでしょうか。調べてみると、現在は安房の「健康の森公園」の敷地の外れが起点になっています。それが荒川登山口を経て、小杉谷で分岐。片方は大株歩道入口まで続く小杉谷線で、もう片方が石塚歩道方面へ続く石塚線です。このうちの荒川登山口から小杉谷を経て大株歩道入口までが、縄文杉登山の「トロッコ道」として一般人が歩行可能になっています。
もし、この森林軌道が全て旅客化されたら、安房から大株歩道入口までを列車行けるようになります。
そして、実はその一部は具体化しつつあります。健康の森公園から荒川登山口までの間を、旅客化するための調査が始まっているのです。
屋久島5日目、安房森林軌道の起点の健康の森公園に行ってみます。ここは「苗畑」と言われています。
僕が訪れたとき、苗畑には列車が出発準備をしていて、多数の人がいました。尋ねてみると、森林軌道の旅客化に向けた調査の一環で、地元関係者を乗せた「試乗会」とのこと。

部外者の僕は乗ることはできませんが、列車の出発には立ち会えました。じつはこれ、かなりレアです。最近の安房森林軌道はあまり運転されていないからです。機関車代わりのモーターカーが、原付バイクのような軽い唸りを上げ、するすると進んで森の中に消えていきました。

安房森林軌道の旅客化は、じつはかなり昔から計画があります。紀行作家の宮脇俊三氏は、1991年12月にここを訪れて、森林軌道に乗せてもらっています。そのときの紀行文「夢の山岳鉄道」の「屋久島自然林保存鉄道」の章を読むと、この時点ですでに地元町役場の担当者が構想を語っていて、苗畑から小杉谷までを営業運転させ、小杉谷に宿泊施設や研修所を造る、という案が示されています。
それから20年が過ぎても実現していないのは、いろんな問題がありすぎるからでしょう。それでも、現在こうして実現に向けての調査が進められているのですから、期待したいところです。現在の計画では、とりあえず苗畑から荒川登山口までの旅客化が計画されているそうです。
安房森林鉄道の苗畑~荒川登山口間は立ち入り禁止ですので、一般人は歩けません。ただ、安房の郊外、松峰大橋の近くで、その線路を見ることもできます。

交換設備もあり、手入れもされている路線のように思えました。
こちらは、荒川口分岐。右へ行くと小杉谷、左が荒川登山口です。

計画上の終点の荒川登山口。側線もあり、ここならターミナルを作れそうです。

実現にはハードルが高いでしょうが、旅客化される日が待ち望まれます。