山小屋・白雲荘の夜(2012年富士山登山記9)

事前に見てきた白雲荘のホームページでは「雲上のホテル」とのキャッチフレーズが目を引きます。白雲荘は評判の良さそうな印象を受けていた宿でしたので、それも宿泊に気持ちが傾いた理由です。



フロントに行き、予約なしでも泊まれますか、と尋ねたら「泊まれます」との返事。1泊2食で7500円。金曜日は1000円増し、土曜日は1500円増しになるそうです。



廊下を歩き、一番奥の寝床に案内されます。見た感じは客はまばらで、寝床にも余裕がある様子。しかし、案内された奥の寝床には、すでに先客が1人いて、そこに詰めて寝るように指示されます。「うーん、こんなに空いているのになんで詰めるの?」との感想を呑み込みます。山小屋には山小屋のルールがあるのでしょう。



先客は帽子を顔に載せてぐうぐう寝ています。その横で、僕は荷ほどきをします。ビニールのがさがさした音を立てていたら、先客は帽子を取り、僕をきっとにらんでまた帽子を顔に載せました。

……こわい。

改めて時計を見ると、まだ18時です。いくら山の就寝時間が早いといっても、荷ほどきをして睨まれる時間でもないよなあ、と思いながら、身を縮めてがさがさと手早く着替えました。サポートタイツをして寝るわけにもいかないので、これは別の客のいない寝床にいって脱ぎます。「こんなにガラガラなんだから、こっちに寝かせてくれ~」とため息。

荷物置き場はありませんので、脱いだ服などはザックに詰め直して、寝床の天井につるします。寝床は二段になっていますので、ザックを吊したら下には寝るだけの高さがなんとか残る、という按配です。よくこういう空間構成を考えるなあ、とちょっと感心します。

食事の時間は任意です。山小屋によっては、時間指定されることもあるそうですが、この日の白雲荘は好きな時間に食べられました。

荷ほどきを終えたらすることもないので、すぐに食事をします。といっても、レトルトカレーに謎肉ハンバーグが載っているだけです。



上のパッケージはカイロと、朝食の弁当です。弁当は翌朝食べましたが、中身はこんな感じ。



山小屋に食事を期待してはいけないですね。

日が暮れるのを待ち、夜景を眺めます。今日はガスがかかっているからか、あまりいい夜景ではありません。

日が暮れたら、することもないので、食堂の隅でぼおっとしています。日が暮れてから到着するツアー客などもいます。

おおざっぱにいって、明日未明に出発して山頂でのご来光を目指す登山者と、山頂でのご来光に興味がなく夜明けまで寝る予定の登山者がいます。僕は後者ですが、後者にしては到着が早かった様子。山頂でご来光を拝まないのなら、もう少し遅く着いてもよかったようです。20時くらいまでは到着の登山者はわりと多かったです。

自分も、もうひとふんばりして、富士山ホテルまで行けばよかったかな、と思ったり思わなかったり。

白雲荘からの夜景。


ちっとも眠くなかったですが、20時すぎには寝床に入り就寝。

しかし、布団は固いし、枕は極小だし、スペースは狭いし、廊下の灯りがまぶしいし、周囲のイビキがうるさいし、隣のおっさんの寝息が顔を直撃するし、で寝れたものではありません。おっさんの寝息を避けようと毛布を顔までかぶせると、えもいわれぬ匂い。

「富士山の山小屋は寝る場所ではない。横になる場所だ」

という話を聞きましたが、まさにその通り。とても眠れません。狭くて左右の身動きが取れないだけでなく、足を曲げて立てようにも、吊したザックに当たりますので上げられません。

なんというか、棺桶の中にいるようなものです。仰向けでも横向けでもうつぶせでも、身体を伸ばして横になるだけの空間はあるのだけれど、身体の一部を曲げたりするとどこかにぶつかるのです。

でもこれでは寝れないので、頭と足を逆方向にして、まずは廊下の灯りとおっさんの寝息攻撃を避けます。すると、今度は反対隣のおばちゃんの足が僕の顔を直撃します。しかし、おっさんの寝息よりはマシなので、軽くおばちゃん足を押し戻し、なんとか自分の空間を維持します。

眠れるようになったのは、隣のおっさんが、未明に出立してから。2人分のスペースを使えるようになりましたので、それからは割と休むことができました。やっぱり、スペースの問題なんですね。

なんか、ぼやいてばかりの白雲荘の感想になってしまいました。念のために書くと、白雲荘だけがこういう状態なのではありません。八号目以上の山小屋はみな似たようなものだそうです。翌日、富士山ホテルに泊まった人に尋ねてみても「眠れたものじゃない」という表現は同じでした。

富士山の山小屋。なかなか手強いです。

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