近年の鉄道書ブームで、宮脇俊三の名著はだいたい復刊しました。ただ、復刊してないものもあります。そのひとつが、「インド鉄道紀行」でしょう。


上の写真は文庫ですが、今回、手に入れたのはハードカバーの初版本です。奥付を見たら、発行は平成2年。西暦なら1990年ですから、バブルのピークです。取材は1988年から89年にかけてです。インドが「BRICS」などと称される以前の時代で、「印度放浪」の残り香も漂う頃です。
デリーからカルカッタへ夜行列車に乗り、バラナシ、アグラと有名観光地を押さえ、最後は列車でインド最南端まで行く、という旅程。これを15日間で回るのですから、インドの広さを考えればかなりの強行軍です。それにしても、インド最南端の駅まで行きたい、というのに、宮脇氏のこだわりが感じられました。
この本の旅は、宮脇氏がJTBに手配を依頼して、日本語ガイドを付けて一流ホテルに泊まるフル大名旅行。「そんな大げさなことしなくても旅行できただろうに」とは思いますが、こうした大名ぶりがかえって、当時のインドの雰囲気を感じさせてくれます。