チェスキー・クロムロフの街を歩いてみると、たしかに古い街並みは風情があります。
これが、中心部のスヴォルノスティ広場(náměstí Svornosti)。

メインストリートのラドニチュニー通り (Radniční)。

ヴルタヴァ川 (Vltava)から見た街の景観。

聖ヴィート教会 (St.Vitus Church)。

ゴシック時代 (13~16世紀) に建てられた教会で、聖ヴィートは悪い病気 (ペスト) から人々を守る聖人です。
そして、これがチェスキー・クルムロフ城 (Castle Český Krumlov)。これについては、後述します。

僕はこれまで、世界各地で数多くの歴史的都市を訪れてきました。そのなかでも、チェスキー・クロムロフの保存度の水準は、かなり高いと思います。中世ヨーロッパの地方都市というものが、どういう姿だったのか、これだけはっきり体験できる場所はそうはありません。
また、かわいらしいデザインの建物も多く、日本人女性には人気の街になりそうです。これから、「チェスキー・クロムロフブーム」というものが仮に日本で起きたとしても、僕は驚きません。それほどまでに魅力のある街並みです。

ただ、違和感も感じました。街全体がいわばテーマパークのようで、地に足の着いた伝統や生活感がいまひとつ感じられないのです。
たとえば、京都の場合、歴史的な街並みでも、一歩裏道へ入れば、現在の京都を支える商工業施設がありますし、現代的な暮らしをする住民がいたりします。一方で、伝統的な工芸を継ぐ職人さんの姿が見られたりして、歴史と現在がモザイクになっています。ところが、チェスキー・クロムロフは、きれいな建物と観光客相手の店ばかりで、裏道に入るとやや荒れ気味の住居が並んでいるだけ。観光以外の産業の姿が見えず、歴史と現代がうまくモザイクになっていない気がします。
前項で書きましたように、チェスキー・クロムロフでは、第二次大戦後、住民の大多数を占めてきたドイツ系住民を追放しました。ドイツ系が造った街なのに、いまはドイツ系住民がいないのです。その結果、現在のチェスキー・クロムロフは、器と中身が合っていないのかもしれません。

美しい歴史的建造物の背景に、中欧特有の歴史的事情を垣間見ることができる。それがチェスキー・クロムロフの街の、もう一つの側面です。