日本からパリに早朝着。4月末のパリはまだ寒く、シャルルドゴール空港の朝の気温は4度。空港内にある鉄道駅には暖房はほとんど効いておらず、凍えるようにして列車を待ちます。
予約してある列車は9時58分のマルセイユ行き。定刻より少し遅れて、シャルルドゴール駅に入線してきました。

車両はTGV レゾ (TGV Réseau,TGV-R) 。1990年代に開発された車両で、主にフランス北部のTGVで用いられています。この列車はベルギーのブリュッセル発なので、この車両が充当されているのでしょう。アルストム製、最高速度は320km/hですが、これから乗る路線の最高速度は300km/hに制限されています。
10分ほどの遅れで出発。時間帯のいい列車だからか、結構混雑しています。1等車に乗りましたが、席はほぼ埋まっていました。
それにしても、1等というのに狭いです。足をなんとか組める程度のシートピッチしかありません。日本の新幹線のグリーン車のほうがよほど快適です。というか、シートピッチだけならば、新幹線の普通車のほうがゆったりしているでしょう。

座席は後ろ向き。1等車くらいは回転式にしてほしいと思いますが、ヨーロッパでは回転式リクライニングシートは一般的ではありません。頭端式ホームが多いので、途中で車両の進行方向が変わることがあり、回転式だと混乱するので固定式になっている、とも聞きます。
今回は「フランスレイルパス」の3日間版29,100円を購入し、パリからアヴィニョンの往復に用います。レイルパスだけではTGVを利用できませんので追加料金が必要ですが、1列車1200円程度。それを含めても、「パリ~アヴィニョン」のTGV1等料金は、実質12,000円程度です。600キロ以上の距離を乗ることを考慮すれば、それなりに安い価格といえます。ただし、フランス国鉄のウェブサイトで格安チケットを早期購入すれば、もっと安く買えたはずです。
列車は「LGV東連絡線」という路線を50kmほど走り、モアズネイ分岐点から「LGV南東線」に入ります。「LGV」とはフランスの高速鉄道路線のこと。その上を走る車両が「TGV」です。日本の場合は、路線も車両も「新幹線」ですが、フランスでは路線と車両は名称が異なります。
シャルルドゴール空港を出てから、車窓はさっそく田園風景。牧草地が続きます。車窓の変化は乏しく、若干退屈。どこを走っているのかもよくわからなくなります。
GPSで確認。

あらかじめグーグルマップをキャッシュしておけば、通信料ゼロでこうしたGPSを使えます。
2時間ほどでリヨン・パールデュー駅着。ここで乗客の半分くらいは降りました。リヨン・パールデュー駅を発車すると、TGVの車庫が見えます。パリ~リヨン間はTGVが最初に開業した区間ですし、いまでもリヨンはTGVの重要拠点なのでしょう。

リヨンから先は、「LGV地中海線」に入ります。2001年に開業した路線で、橋梁のコンクリートもまだ新しいです。
リヨンから1時間ほどで、アヴィニョンTGV駅に到着。シャルルドゴールからは3時間10分でした。

TGVの停車時間は短く、すぐに発車していきます。多数の荷物を持ったご婦人二人が、自分の荷物を下ろしきれないうちに、列車のドアが閉まってしまいました。「荷物がまだ中にあるから開けてくれ」とご婦人が女性駅員に嘆願していましたが、駅員は聞き入れず、無情にも発車合図。列車はホームを出て行きました。
日本なら、この場合は開けてくれるのではないかな、とも思いますが、フランスはなかなか冷酷です。フランスの鉄道は日本よりは定時性にうるさくないと思っていたので、この対応はやや意外でした。
駅員は、「列車に連絡しておくから、荷物はエクサンプロヴァンス(次の駅)で確保しておいてもらいます」と伝えている様子。その姿にへりくだりはなく、堂々としており、謝ったりしているわけではありません。荷物を下ろせなかったご婦人も、ぶつぶつ言いながらも強く抗議はしていません。
なんというか、フランスにおいて鉄道利用者は「お客様は神様です」とはされていないのだな、ということを認識させてくれる一幕でした。