奥尻島は、東京からは訪れにくい場所です。
もっとも簡単な訪問方法はもちろん飛行機ですが、函館との間に1日1便しかありません。函館発は午前11時50分。これに乗るためには、羽田発7時25分の便に乗らなければなりません。函館空港での接続が悪く、3時間近くも待ち時間があるのです。7時25分に羽田を出る飛行機に乗るためには、都内在住者は5時頃に起きなければならないでしょう。
飛行機のほかにはフェリーがあります。江差との間に1日2往復、瀬棚との間に1日1往復です。

江差発は朝便の9時30分発と夜便の18時45分発。函館から江差線を利用した場合、始発列車でも午前便には間に合いません。バスの場合、函館駅前を7時10分に出るバスに乗れば、江差バスターミナルに9時19分に到着します。後で聞けば、このバスでギリギリ間に合うそうですが、事情を知らない旅行者にはきわどい接続にしかみえません。つまり、旅行者が朝便のフェリーに乗るには、江差に泊まることになります。
広告
夜便に乗るには、木古内を14時44分に出る江差線に乗る必要があります。函館13時56分発の特急に乗ればいいので、羽田発10時25分の全日空便で間に合います。東京駅を9時36分に出る東北新幹線でも間に合います。都内を9時頃に出れば、列車でも飛行機でも夜便に間に合います。
ただし、夜便は、奥尻島に着くのが20時55分。着いてから夕食を取ることすらできるかどうか微妙な時間で、夕食を船内ですまさないといけなくなりそうです。しかし、船内にレストランはありません。
瀬棚からのフェリーは14時05分発、15時40分奥尻島着のダイヤです。時間帯としては利用しやすく、札幌を8時30分に出る高速バスに乗ると、13時に瀬棚に着くことができ、フェリーにちょうどいい接続となっています。つまり札幌からは奥尻島は訪れやすいのです。実際、奥尻島を訪れる観光客は札幌周辺の人が多いとのことですが、この交通事情を反映しているのかもしれません。
筆者は、江差に宿泊して、翌朝の朝便のフェリーで奥尻島に渡る計画を立てました。ところが、江差の宿が満室で、どこに電話しても断られます。しかたなく、函館に宿泊して夜便に乗ることにしました。夜便ですと、島に近づくときに暗くなってしまい、せっかくの船旅を満喫できません。しかし、奥尻と江差の宿が限られている以上、函館に宿泊して夜便のフェリーを利用するほかに、奥尻島を江差線利用で訪れる方法はありませんでした。
広告
奥尻島への訪問はなぜこんなに不便なのでしょうか。
まず、航空路についてですが、かつては全日空系のエアーニッポンと、それを継承したエアー北海道が1日2~4往復していたそうです。しかし、エアー北海道が債務超過に陥り解散。JAL系の第三セクターである北海道エアシステムが路線を引き継ぎました。このとき、機材はエアー北海道の「DHC-6」(19人乗り)から「サーブ340B」(36人乗り)に大型化され、それと引き替えに1日1往復に減便となったそうです。

小型機から大型機になることはいいことのように見えますが、減便されれば利用者には不便になります。しかし、函館~奥尻の搭乗率は年間で40%程度だそうで、増便するわけにもいかない様子。結局、羽田線の接続を考慮するダイヤにはできず、羽田からの訪問が不便になってしまっているようです。
フェリーについては、かつては、江差航路と瀬棚航路が別の船で運航されていたそうですが、2010年にこれを1隻に統合。それにより、函館方面との接続を考慮しにくいダイヤになってしまったそうです。かつての夏季ダイヤは、江差発は7時と13時の2便だったそうです。13時発の便には函館10時12分発の江差線に乗り、江差駅からタクシーを使えばちょうど間に合いました。今もこの船便があればベストなのですが、残念ながらありません。
現在、東京から奥尻島を訪れる場合、フェリーでも飛行機でも接続が悪い、という現実に向き合うことになります。いっぽう、札幌からは、瀬棚経由のフェリーを使っても、函館経由の飛行機を使っても、順調な接続で訪れることができます。