奥尻空港は、島の南端部にある空港です。かつては800メートル滑走路の超ローカル空港でしたが、2006年に1500メートル滑走路が完成しました。
1500メートル滑走路があれば、なんとかジェット機も離着陸できると思いますが、実際には36人乗りのプロペラ機サーブ340Bが1日1便、函館との間を飛んでいるだけです。2006年より現在の運航体制となり、当初は年間約1万2000人あった利用者も、2009年に1万人を割り込み、その後も減少傾向で推移しています。年間の平均搭乗率は40%程度。つまり、1日あたり往復あわせて30人程度の利用者しありません。それも、役場職員などの利用を推奨して、なんとかこの数字のようで、路線維持には苦心している様子です。
空港に到着してみると、とてもきれいな空港です。2004年に完成した新ターミナルで、すでに築9年を経ているはずですが、ほんの数年前にできたようにぴかぴか。あまり使っていないからでしょうか。


1日1便しかない空港なので、飲食店などはありません。出発まで2時間以上あるので、喫茶店でもあればコーヒーでも飲むのに、と思いましたが、そんなものはありません。2階に小さな土産物屋らしきものはありますが、商品は乏しく、フェリーターミナルの土産物屋に比べると著しく見劣りします。

最近は、空港や鉄道駅に「道の駅」が併設されているケースがありますが、奥尻空港にもそういう施設が何かあれば、と思います。が、道の駅を造っても、寄る人はあんまりいませんね。
1日1便とはいうものの、スタッフの数はそれなりにいて、出発時刻が近づくとどこからか警官まで現れました。航空路線を維持するということは、これだけの人手がかかるわけです。奥尻空港の利用者は1日30人程度ですが、空港係員や乗務員をあわせると、同数程度の人手がかかっているように思えました。
こうした利用者の少ない空港だからか、X線検査装置は設けられていません。そのため、利用者は検査係員による「開披検査」を受けなければなりません。荷物を一つ一つ開けて、中を調べられるのです。日本では初めてでしたので、良い経験、と思って受けましたが、やってみると面倒ですし、気分のいいものではありません。X線検査装置は数百万円するそうで、奥尻空港の利用者数からすれば仕方ないようにも考えられますが、これだけ立派なターミナルを建設したなら、その予算を少し削ってでもX線検査装置の一つくらい導入できないのか、とも思います。

手作業で時間のかかる保安検査を抜け、きれいな待合室で待っていると、函館からの飛行機が着陸してきました。北海道エアシステム(HAC)のライトグリーンの機体を期待していましたが、JAL系塗装で、ちょっと残念。

函館からの便から降りてきたのは、背広姿の中高年男性ばかりで、待合室の声を聞くと「町議」とのこと。この日の降機客のほとんどが役所関係者のようで、奥尻の航空路線の現実を見た気がしました。
東京から奥尻島へは、フェリーよりも空路のほうが圧倒的に便利ですが、ウニのシーズンであるこの時期ですら、東京からの観光客は少ないようです。昨年訪れた屋久島の航空路線が、羽田や伊丹からの乗継客で賑わっていたのとは対照的です。道内からの奥尻島への観光客はバスとフェリーを使いますから、首都圏からの観光客を増やさなければ、奥尻空港路線の将来は暗いと思わずにはいられません。
筆者が乗った函館行きのフライトは、7割くらいの搭乗率。この路線にしては混んでいるほうなのでしょうか。
北海道エアシステムのサーブサーブ340Bは、耳をつんざくようなプロペラ音を響かせて、定刻に奥尻空港を離陸しました。
これで、「江差線・奥尻島生ウニ紀行」は終わりです。お読みいただきありがとうございました。