楽天・田中将大がシーズンをまたいで21連勝の日本新記録。その記録のかかった試合を見に行ってきました。西武ドームです。
先日の開幕16連勝もそうですが、今日の21連勝も、達成されれば伝説の記録になるのは間違いありません。私たちの世代が稲尾の鉄腕を想像するように、後の世代の人たちは、この記録を仰ぎ見ることでしょう。その記録の瞬間に立ち会える機会にあるのならば、という気分で、筆者も球場に足を運びました。
西武ドームには、前身の西武球場時代から何度か来たことがありますが、この日は見たこともないような大混雑。お盆ということもあるでしょうが、やはり田中の記録の瞬間を見たい、という人が多く集まったようです。
指定席は全席売り切れ。球場のチケット売り場には長蛇の列ができています。西武ドームでこんな大行列を見たのは、筆者は初めてです。球場内に入ってみると、内野自由席の一部に空席があるほかは、客席はぎっちり埋まっていました。田中人気もあるでしょうが、パリーグ自体の人気も上がっていることを実感します。

試合は田中が元同僚の渡辺直人に甘い球を投げては打たれてピンチを作ったほかは、ほぼ危なげない投球。直人にだけはどうしてこうも甘いのだろう、という点だけが気になります。決勝打の銀次の打球は、高く上がった外野フライにしか見えず、まさかホームランになるとは思いませんでした。銀次にホームランが出て勝つなんて、さすが田中は運があります。
ブルペンでは、5回あたりからリリーフ陣が投げ込んでいました。田中が投げているときでも、ブルペンの用意はするんだな、と観察していましたが、よく見ると軽い調整のようです。最初に菊池、それから金刃、斉藤、青山、小山といった面々が軽く投げていました。が、田中の調子は悪くないので、ブルペンに緊張感はなく、和気藹々とした雰囲気です。

抑えのラズナーだけがブルペンできちんと投げ込んで、9回のマウンドに上がっていきました。ラズナーがマウンドに向かうとき、リリーフ陣が揃ってその後ろ姿に手を合わせていた姿が印象的です。
16連勝達成のときは、8回に田中の後を受けた小山が崩れてピンチを招き、青山、金刃、斉藤とつないでなんとか逃げ切りました。最近の小山は安定しており、あれだけ派手に崩れたのは久しぶりに見ましたが、それだけ大記録のかかった試合で後を受けて投げるのは大変なのだな、と感じたものです。
この日は田中が8回を投げたことで、ラズナー以外のリリーフ陣の出番はなくなりました。小山や青山はほっとしたに違いなく、祈る気持ちでラズナーに手を合わせたのかもしれません。
こういうブルペンの様子は、テレビではわかりませんし、ブルペンが屋内にある球場でも見ることはできません。西武ドームは、そういう意味で見ていて楽しみのある球場でした。
ラズナーは、9回をきっちり3人で抑えました。「伝説を超える瞬間」は意外とあっけなく、当事者がマウンドにいないからか、そんなには盛り上がりませんでした。
観衆は29846人。勝利インタビューの後は、「田中」コールが巻き起こりました。西武の本拠地ではありますが、この日ばかりは楽天ファンも多かったようです。とはいえ、西武ファンも暖かくこの歴史的瞬間に向き合っていたようにみえました。相手チームも尊重する野球文化がパリーグには根付いているかもしれません。
佐藤義則 一流の育て方 ダルビッシュ有 田中将大との1600日