井川線最終列車(鉄道全線完乗はアプト式で7)

大井川鐵道は井川駅が終点だが、この先、井川湖を縦断する渡船があり、それに乗れば井川本村まで行くことができる。さらにその先、井川村から地元のバスも出ており、それに乗れば奥大井を極めることができる。

せっかくここまできたのだから、そうして行けるところまで行っててみたい。だが、あいにく今回は日帰りの予定である。ここで引き返さないと、東京に今日中に戻れない。何しろ、次の折り返し列車が井川駅の最終列車なのである。

未練たらしく、せめて渡船乗り場だけでも覗いてみようかと思ったが、駅前に案内板があり、「ダム水位低下のため運航中止」とある。なぜかほっとした。もし渡船に乗るつもりでここまで来たなら、愕然としたことだろう。

大井川鉄道22

折り返し時間は短い。駅前には特に見る場所もなく、トイレに行って帰りの列車に乗り込んだ。帰りの乗客は他に1組。それも途中の長島ダム駅で降りてしまった。もう他に客はいない。それでも、車内では、女性車掌が案内放送を丁寧に続けている。

大井川鉄道24

結局、終点の千頭駅まで、他に乗客はいなかった。

朝、金谷駅をSL列車で出たときは、あんなにたくさんの人がいたのに、どこに行ってしまったのだろうか。ローカル線で終点まで単純往復する人が、他に誰もいないのである。

ああ、それは当たり前か。当たり前ですね。普通の人は、8時間もかけてローカル線を単純往復したりしない。

当たり前のことが当たり前に思えなくなっている。それが鉄道乗りつぶしであることを、改めて悟った全線完乗の夜でありました。


これで「鉄道全線完乗はアプト式で」はおしまいです。お読みいただきありがとうございました。

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かまくら・じゅん
旅人。旅行総合研究所タビリス代表。日本と世界の世界遺産、鉄道、島などを取材中。→詳しいプロフィール

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