夜行急行「はまなす」の廃止報道が出たのは2015年8月下旬のこと。そんな報道がなくても、北海道新幹線開業時に廃止になるのはわかっていたので、最後にお別れ乗車してきました。
「はまなす」は青森~札幌間を結ぶ急行です。座席車と開放B寝台の混結の客車急行で、昭和の名残を残します。「北斗星」が廃止されたので、開放B寝台を連結する最後の列車となりました。
開放B寝台。つまり客車2段式B寝台です。
筆者が初めて客車2段式B寝台に乗ったのは、1980年頃の特急「ゆうづる」の24系でした。東京~青森まで乗車し、十和田湖へ行ったことを覚えています。
札幌駅に行くと、すでに急行「はまなす」は入線済みです。DD51が青い客車を引く姿をみられるのも、あとわずか。


B寝台は2両で、1両が24系、1両が14系です。筆者の寝台は14系でした。
車内放送によると、本日の寝台は売り切れ。満席の開放B寝台に乗るのなんて、いつ以来だろう? 2009年に急行「あおもり」の最終運転に乗って以来かもしれません。


数年前に「はまなす」に青森から乗ったときは、ガラガラでした。廃止目前となり、みなさん、お別れ乗車しているのですね。こんなにカーテンが閉まりまくっています。

ただ、率直にいうと、混んでいる開放寝台はあまり快適ではありません。上段の人が目の前のはしごを伝って上ったり降りたりするのに、少し違和感を感じます。でも、昔はみんなこうだったんだよな、それどころか、3段式だったから、もっと上り下りが頻繁だったんだろうな、と思ってみたり。
列車は定刻に札幌を発車。検札を終えて、新札幌を過ぎると消灯です。「はまなす」は夜10時に出るので、さっさとみなさん、寝るのです。鉄道ファンが多いものの、みなさん、お行儀がよく、夜中までうろうろしている人はあまりいませんでした。筆者も就寝します。
ああ、これが、開放B寝台最後の夜だな、と感慨。初めて乗った「ゆうづる」から何度乗ったか数えてみようとしましたが、思い出せません。たぶん、十数回くらいでしょうか。若い頃は寝台は贅沢だからあまり使いませんでしたし、寝台料金が惜しくなくなった頃には寝台列車自体をあまり使わなくなりました。

寝台は揺れます。14系だからか、電源音も響きます。「北斗星」のお別れ乗車をしたときにも感じましたが、ごとごと小さな揺れがあり、熟睡できません。
浅い眠りのなか、3時すぎに目が覚めました。函館駅に停車しています。2時52分着で、通常ダイヤなら3時22分発ですが、青函トンネル工事のため3時56分発に変更されています。1時間の長時間停車ということで、ホームにも人がちらほら。

座席車を見てみると、自由席は半分程度の乗車率でしょうか。二席を占拠して寝ている人が多いです。函館から乗車した若い女性が席を見つけられずにうろうろし、諦めてデッキに立ちました。席が空いていても座れない。これでは途中駅からの利用者は減っていくばかりでしょう。
函館を出たところで、また横になります。木古内を過ぎると揺れがなくなり、快適に寝られます。そして起きたら左車窓に陸奥湾が。夜も明けてきました。おはよう放送が流れ、もう終着駅は間近です。
トイレに行ったら満室で少し待ち、洗面所も二つともふさがっています。寝台列車のトイレや洗面所がこれほど混雑している様子は、久しぶりに見ました。そして、これが最後でしょう。通路のイスにもずらりと人が座っています。

「はまなす」はゆっくりした速度で青森駅に入っていきます。ごとりと停車したとき、開放B寝台の最後の旅が終わりました。
「ゆうづる」から始まって30年。あのときも、降り立ったのは青森駅でした。筆者のB寝台の旅は、青森で幕を開け、青森で完結したわけです。


ありがとう。そしてさようなら。